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28 連載中の個展開催 

共感のお声がけうれしく 多くの支援あればこそ

11月26日に無事終了した、ホクト文化ホールの「小山利枝子展」会場で

 今回で私の「私の歩み」連載は終了します。この連載のお話を頂いた時は、少々珍しい職業だというだけで、特に輝かしい業績を残してきたわけでもない私がお受けしても良いのだろうかと迷いもありました。しかし、連載がスタートして過去の話をしていくうちに忘れていた記憶がよみがえり、散らばっていた記憶の断片が一つの流れになり、さまざまな出来事が自分にどのような影響を与えたのかを改めて自覚することができて、私にとって大変貴重な連載となりました。

 そして11月14日から2週間の会期で、ホクト文化ホールのギャラリーで開催した個展には、連載中というタイミングだったこともあり、連載を読んでくださっている人が驚くほどたくさんお見えになりました。また、その多くの人たちから「私の歩み」に対して共感してくださるお声がけをいただいたのは、これまたうれしい驚きでした。

 ホクト文化ホールでの個展開催も、ISHIKAWA地域文化企画室主催、県文化振興事業団共催というかたちをとったのも初めてのことでした。長野市内で開催した個展の中で最大規模の展示でしたので、「私の歩み」を読んで初めて私の作品をご覧になる人にとっても、長年私の作品をご覧になっている人にとっても、見応えのある展示になっていたと思います。展示した作品は1993年制作のものから今年制作の新作、500号の大作からはがきサイズの小品、キャンバスにアクリル絵の具で描いた作品、紙に水彩やパステルで描くなど、制作年代もサイズも技法も多様な100点以上で構成しました。近年は美術館など大きな会場で展示する機会に恵まれることが多くなり、気が付くとその会場を生かす作品構成ができるだけの作品の厚みができたと実感した個展でもありました。

 2021年に「シンビズム4」展で展示した大作3点に30号1点、デッサン20点を、会場になった上田市立美術館に寄贈し、収蔵されることになりました。寄贈に対して上田市から表彰していただき、公益のために私財を寄付したということで、今年7月には国から紺綬褒章を頂きました。ひたすら自分が表現したい一心で制作してきた作品を寄付したことで、表彰状や褒章を頂けるとは思ってもみませんでした。

 若い頃は、こんなに頑張っているのに、なぜもっと評価されないのだろうと、未熟さから来る不満や葛藤があり、それをエネルギーに変えて進んでいました。がむしゃらで自分しか見えていない未熟な私を、多くの人が支えてくださったことのありがたさが、今の自分にはよくわかります。表彰も褒章も、支えてくださった多くの人たちと共に頂いたのだと思います。若い頃は、周りの作家の華やかな活躍を見て焦ることもたびたびありましたが、美術の世界で長く活動をしていると、評価はある程度の時間差でやってくるという面のあることが分かってきます。焦らずぶれずに自分を信じてやり続けていると、どこかで見ている人がいて小さくてもスポットを当ててくれ、それに励まされてまた新たな作品に向かっていく。そういった繰り返しの中で少しずつ活動の場が広がり、作品の評価も上がってきました。かつて伊那市で娘を背負いながら台所に立っていた私が、今回のように県の共催で大きな個展を開催できるようになったことは、多くのご支援があればこそだと、今回の個展でも実感しました。

 私は現在68歳ですが、近年同世代で頑張ってきた作家たちの訃報が目立つようになってきました。健康で作家活動を続けていられることも、決して当たり前ではないのだと思うようになりました。今与えられている場所を大切にしながら、自分の可能性を信じて、今まで描けなかった作品を描いていきたい。私の作家活動はまだまだ続きます。

 聞き書き・松井明子

 小山利枝子さんのシリーズはおわり


 次回(1月1日号)からは、ライチョウ研究者で信州大学名誉教授の中村浩志さんです。


2023年12月16日号掲載

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