26 スパルタ教育

竹刀で指導も反発に猛省 独自の育成機関を設立へ

1999年、第12回ALPHAヘアショー(前方の黒いキャップが私)

 「長野の美容界を変える」ことと並び、「力のある美容師を育てる」という目標にも私は本気で取り組みました。しかし、人を育てることは生半可なことではできません。失敗と後悔、試行錯誤の連続でした。

 ALPHAの若手育成は、「スパルタ教育」から始まりました。毎日午前8時、社員全員がジャージーを着て南千歳公園に集合。ジョギング、ラジオ体操に続いて朝礼と腹から声を出すあいさつ練習。店で朝食を食べて制服に着替え、開店まで1時間の技術レッスン。閉店後も午後11時過ぎまで夜のレッスンをしました。

 「人は厳しい環境で必死に努力してこそ伸びる」というのが私の体験的な信念でした。「19歳で上京後に学んだことはすべて自分の店と社員に還元するぞ」という強い思いもありました。

 今では許されることではありませんが、技術や接客態度で気になることがあれば子ども用の竹刀で社員の尻をたたくこともありました。

 社員たちは飛躍的に力をつけていきました。しかし、こんなやり方が続くはずはありません。店が忙しくなり社員を増やしましたが、1年もたたずに辞めていく社員もいました。「こっちは一生懸命教えているのに、なぜ伝わらないんだ」。人材育成や教育、指導法の本を読みあさりましたが、空回りすることが続きました。

 開店から数年目。ある中堅の女性社員から「私たちは家畜ではありません。口で言えば分かるのでたたくのはやめてください」と言われました。私は「言ってできないから手が出るんだ。たたかなくても教えられると言うなら君に任せる」、と彼女に若手指導を任せることにしました。

 この出来事は、私が「人を育てる」ことに対して真正面から考え直すきっかけになりました。

 高校の野球部やインターン時代、しごきや体罰で散々嫌な思いを味わったこと、原宿の美容室で「技術がない」新人を次々と辞めさせる社長に「違う面で伸ばしてあげたい」と訴えたことを思い返しました。

 上達まで時間がかかる人もいれば、技術は完璧ではなくても接客がとても良くてお客さまに好かれる人もいる。個性ある若者を育てていくには今の俺のやり方ではいけない。深く反省し、手を出すことはやめました。

 また、細かな指導を先輩社員たちに任せたことで、少し引いたところから若手育成の枠組みを考えることができるようになりました。

 営業前後の店内でひたむきに練習する社員の姿に、「もっと技術を学びたい」「早くお客さまを担当したい」と切実に願った自分の下積み時代が重なりました。

 「上からの指導ばかりではなく、やる気のある若手が自ら育つ場所が必要なのではないか」。そんな発想から生まれたのが、美容師の卵たちが活躍できる独自の美容師育成機関「AHA(アルファ・ヘア・アカデミー)」でした。

 スパルタ教育への反省から生まれたAHAは、ALPHA全体に予想以上の化学反応をもたらしました。

 聞き書き・村沢由佳


2022年3月19日号掲載