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25 絵本「森のくまさん」

第5作 3月ごろ出版予定 力の限り描いていきたい

絵本を買ってくれた人のために絵本にサインをする私

 木曽おもちゃ美術館は2022年11月、木曽町にオープンしたおもちゃをテーマにした施設です。美術館といっても実際におもちゃを手に取って遊べ、子どもたちにとても人気があります。


 私は23年11月、上松町の上松小学校で講演した後に参加した「木曽町サポーターズ倶楽部」の会合の中で、同美術館へ行くスケジュールが入っていました。美術館には、私の絵本「森のくまさん 木曽物語」が飾ってありました。後で聞いた話では、出版元の「長野県緑の基金」が寄贈したそうです。


 「私がこの絵本の作者です」と名乗って館長と会い、名刺交換をしました。そこで館長の「個展をやりましょう」という提案を受け、24年8月から約1カ月間、木曽おもちゃ美術館で個展を開催しました。


 美術館は元小学校校舎などを改築したものでした。絵を飾る専用のスペースがなかったので、体育館のステージにイーゼルを並べて絵を置き、ステージの下からお客さんに見てもらうスタイルにしました。近くで見てほしいと思い、ステージ上をお客さんが歩いて見ることも検討しましたが、イーゼルの脚やLED照明で足元が狭かったため、そうしました。


 また、「トリコローレ」のコンサートと絵本の朗読会も開催しました。おぶせ藤岡牧夫美術館でかつてクリスマスコンサートを毎年開いた3人のグループで、コンサートではアニメ音楽を演奏し、朗読では白い壁をスクリーン代わりに絵本を投影しました。


 子どもたちはおもちゃで遊ぶことに夢中で、むしろ大人が熱心に聴いていました。イベント終了後の絵本の販売会とサイン会では、絵本を買ってくれた人や読む人のことを思い浮かべながら、サインのほかにも熊の絵を描いたりしました。いろいろと反省点はありましたが、個展が無事に終わってほっとしました。


 24年は個展の準備をしながら、シリーズ5作目となる「森のくまさん」最新作の制作を進めてきました。すでに文章は完成しており、残すところあと数点の絵のみで、25年3月ごろの出版を予定しています。これまで千曲川、木曽、南信州、北アルプスの第1弾ときて、今度は北アルプス第2弾です。出版後、安曇野市や大町市、白馬村などで個展ができればと思っています。


 早いもので今私は75歳。イラストレーターになってから約50年たちました。イラストレーターになってうれしかったことは数多くあります。私が紹介された記事をファイルに残している知人や、あいさつ代わりに「私の歩み」の感想を伝えてくれる近所の人もいます。それまで絵にあまり興味のなかった人が私の絵を見て「藤岡さんの絵っていいですね」と言ってくれたこともありました。


 過去の回で話しましたが、私がイラストレーターになる決意をしたのは大学3年生の時に友人が亡くなったのがきっかけです。もし彼の不幸がなければ、私はイラストレーターになる決断をできなかったかもしれません。今でもそのことを背負って生きています。


 デビューした頃は仕事が不安定で、現在の姿は全く想像できませんでした。今の私がデビュー当時の私に声を掛けるとすると「先の見えない世界に進んで無理したな。でも、なんとかなったよ」と言います。

 まだ絵に描けていない県内の自治体もあります。全ての自治体は描けないかもしれませんが、今後も力の限り描いていきたいと思います。

(聞き書き・広石健悟)


 藤岡牧夫さんのシリーズはおわり


2025年1月11日号掲載

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