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24 上松小で出前授業

150人の全校児童と創作 自由な発想持ち続けよう

子どもたちが作った「木曽駒ケ岳のクリスマス」

 2023年、上松町立上松小学校の150周年記念事業として行われた出前授業に出かけました。生まれてから4歳までいた上松町の小学校で、150人の全校児童に教えるというので感慨もひとしおでした。


 出前授業は11月の講演、12月のワークショップという2本立てでした。


 講演では、どうして絵の仕事を選んだのか、絵本作家になった経緯などを簡単に話しました。画材の話では、筆やパレット、絵の具について説明しました。一口に筆と言っても毛の種類が数多くあり、ヤギ、馬、豚、タヌキ、それにテン、イタチ、ミンクなどの動物の毛、そして化学繊維をまぜて使います。山羊やミンクの毛は柔らかく、豚やイタチの毛は硬くてコシがあるなど、それぞれに特徴があります。


 12月のワークショップでは、全校児童が学年混合の5グループに分かれ、「春、夏、秋、冬、クリスマス」の5枚の絵をそれぞれ描くことに挑戦してもらいました。サイズは縦2メートル×横4メートルほど。すべての絵に必ず木曽駒ケ岳を入れることとしました。ただ、ワークショップの時間は限られているため、一から描くと時間が足りません。


 10色ほどの色画用紙を用意し、現地で子どもたちが山や木の形に切りながらベースとなる紙に貼っていくという方法を取りました。画用紙を貼ってから描きたい絵があれば、それも描いてよいとしました。子どもたちの発想を大切に考えました。


 子どもたちは講演の時とは打って変わり、とても集中している様子でした。内心「1時間くらいで飽きる子もいるかな」と思っていましたが、実際には1時間半では時間が足りないようでした。


 一生懸命制作している子どもたちの姿を見てとても感心しました。子どもたちの発想の豊かさにも驚かされました。木曽駒ケ岳が噴火している様子を描いたり、雲に羊の足を描いて「羊雲」を描いたりしていました。


 私の持論として、子どものうちは楽しんで絵を描いてほしいと思っています。周囲の大人はうまいかどうかで子どもの絵を判断するかもしれません。しかし、たとえ上手でなくても魅力的な絵を描く子どもはたくさんいます。だから、私は上手かどうかという視点では子どもの絵を見ません。遊びの延長で絵を楽しんでもらえたらと思っています。


 もちろん、中にはプロになりたいと思う子もいるかもしれません。しかし、プロになるための訓練を積むのは中学生になってからでも遅くないと思います。子どもたちには自由な発想を持ち続けてほしい、あるいは絵に限らず自分の好きなものを見つけて没頭してほしいと願っています。


 ワークショップが終わり、子どもたちに「今日の授業が楽しかった人は手を挙げて」と聞くと8割くらいの子どもが手を挙げました。また、グループで1枚の絵を仕上げるという作業に先生たちも喜んでくれました。


 今後も、依頼があればできる限りワークショップを開催していきたいと思います。

(聞き書き・広石健悟)


2025年1月1日号掲載

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