21 ブランド立ち上げ
- 6月14日
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「エコファッション」を展開 愛知万博で作品披露も

2003年、県信濃美術館(現・県立美術館)での個展を終えて間もなくのこと。バッグの企画・製造販売の「(株)クイーポ」(本社・東京)さんと契約を結んだことを機に、私は新たなエコロジーブランド「ECO(エコ)MACO(マコ)」を立ち上げました。
クイーポの創業者で当時社長の岡田国久さん(1937〜2015年)は千曲市の出身で、「人間も自然の一部である」という理念を持って、徹底したエコロジー製品の開発にあたり、バッグのオリジナルブランド「gen(ゲン)ten(テン)」を国内外の直営店や百貨店などに展開していました。 美術館で私の作品をご覧になった岡田社長は「メッセージの伝わる、とても良い作品だった」とおっしゃり、「洋服とバッグというかたちで、ファッション界にエコロジーを一緒に広げていこうじゃないか」とお声がけくださったのです。
私にとっては、とてもありがたいお話であり、ビジネスパートナーとして店舗展開が始まっていきます。
さっそく同年12月には、「エコマコ」第1号店が横浜でスタート。翌年には、日本橋三越に2 号店、05年には長野市にエコマコ3号店がオープンしました。店舗運営はクイーポが、私はデザインや商品企画に集中しました。
一方の「エコマコ」ブランドの洋服は、世界で初めてのポリ乳酸繊維がメイン。洋服の製作には特許を取得するほどの高度な技術が必要であったため、そのノウハウを持ち、量産できるのは私どもだけでした。その結果、デザインだけでなく生産まで行うことになったのですが、そのころのエコマコのスタッフは私も含めて6人ほど。店舗が増え、発注がすごい勢いで入ってくるようになると、アトリエはほぼ生産工場のようになり、量産体制を整えるのに苦労しました。数年後には、契約の内容を見直して、店舗を絞り、自分たちのペースで運営していくことを願い出たことを思い出します。
ビジネス展開が始まり、目まぐるしい毎日を過ごしていた頃、ファッション界ではアジアファッションを世界に発信することを目的に、日本、中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国の連合会「アジアファッション連合会」が発足しました。そこでは毎年、日本ファッション協会(東京)が日本代表のデザイナー3人を選出しており、私もその中の一人として参加させていただきました。
04年、初回となる北京で開かれた「チャイナファッションウイーク」では、私が日本を代表するエコロジーデザイナーとして選ばれ参加。経済発展する北京でアジアファッション連合初のショーが開催され、その第1号として、圧倒されるほど規模の大きな会場で、大勢の人たちの熱気に包まれてランウエーを歩く私の作品。大きな拍手に包まれた感動的な光景を今も覚えています。
そして、05年は愛知万博(愛・地球博)の政府出展事業として開かれたファッションショー「ジャパン ファッション〜エコスタイルの新世紀」に森英恵さんら4人のデザイナーと共に私は「エコファッション〜自然環境とファッションの共存」をテーマに作品を披露。この後も韓国、シンガポールのファッションウイークにも、日本代表のエコロジーデザイナーとして参加。また、メキシコシティにあるファッションの学校からも招待を受け、講演とファッションショーを展開するなど、さまざまな海外との交流もファッションを通じて経験させていただきました。
日本でのビジネス展開とともに、海外でのさまざまな交流は、私の人生の幅を広げる大切な経験となっていきました。
(聞き書き・中村英美)
2025年6月14日号掲載