20 エコロジー新繊維
- 2025年6月7日
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時代に一石投じる展開を 「エコマコ」ブランド誕生へ

振り返れば誰にでも人生のターニングポイントとなった出会いや縁は、不思議とあるものです。私にとっても、清掃工場で受けた衝撃をきっかけに、手にしたエコロジー新繊維「ポリ乳酸繊維」との出合いはその後、私の人生を大きく変えるものとなりました。今回は改めてこのポリ乳酸繊維が、21世紀の世界で何故注目される存在となったのかをお話ししておきたいと思います。
以前お伝えしたように、私は1998年の長野冬季五輪で、世界で初めてトウモロコシのでんぷんから得られる乳酸を原料としたポリ乳酸繊維を使った作品を発表。以降、今日に至るまでこの新しい繊維が環境負荷の軽減につながるとの期待を抱き続けながら、そのテキスタイルの開発とともに作品制作を手掛けてきました。ポリ乳酸繊維との出合いが、まさにエコロジーデザイナーとしての礎をつくってくれたのです。
実は長野冬季五輪でのショーを終えて間もなく、アメリカ飼料穀物協会から、フロリダ州オーランドで開くコンペティションで、オリンピックのファッションショーで発表した作品を改めて紹介してほしいと依頼が来たのです。開発初期のポリ乳酸繊維は、当時まだ産業資材としてのテグスやコップ、カーペットくらいの製品しかなく、洋服を作っていたのは世界でもまだ私だけだったのです。
米穀物協会としては生産者が、毎年莫大な量を生産する飼料用のトウモロコシがこんな夢のあるファッションに変わっていくところを実際に見せたいと思ったのでしょう。
そして2003年には、「ポリ乳酸」の商業化で世界をリードしていたカーギル・ダウ・LLC(本社・米ミネソタ州)の世界キャンペーンに先駆けた展示会(ニューヨーク)に招待され、エコロジーのパイオニアデザイナーとして世界80社以上に作品を紹介していただく経験もさせていただきました。

しかし2000年代に入った頃、ポリ乳酸繊維の最大の課題はコストと言われ、石油原料のポリエチレンなどに比べると5倍ほど値は高く、普及、拡大にブレーキをかけていました。ただ、石油の枯渇問題に加え、二酸化炭素排出の軽減など、植物由来の原料から量産できるエコロージー繊維の開発は急務であり、その筆頭となったのが「ポリ乳酸」でした。まさに21世紀の資源開発ビジネスとしても世界が競い合って動いていたのです。
専門家は、10年後には生分解性樹脂が全プラスチックの10%を占め、さらにその半分以上は、石油の枯渇などの理由からトウモロコシなど植物を原料としたものになるだろうという見方をしていました。そうした中、私は自分の代名詞とされるまでになる「ポリ乳酸」繊維をメインに、美術館での展示やデパートでの販売など、徐々に展開を広げていきました。
そんなある日、一本の電話をいただきました。「あなたのことを新聞で見ました。一度東京のオフィスに来られますか?」。これが後にエコロジーブランド「エコマコ」の誕生につながる(株)クイーポとの出合いでした。(株)クイーポは徹底したエコロジー製品の開発にこだわり、「genten」というバッグブランドを既に全国に展開していました。
今では当たり前ですが、当時はエコロジーをコンセプトとするブランドは、オーガニックコットン以外ほぼなかった時代。「一緒に一石を投じるモノづくりをビジネス展開していきましょう」と、パートナーとして契約していくことに。ここから横浜、銀座、日本橋、長野とショップ展開が始まっていったのです。
(聞き書き・中村英美)
2025年6月7日号掲載



