15 イオングループ

ワイン売り場改善を「直訴」 流通大手とのパイプ構築

愛媛県のイオンモール新居浜店で、同県のイメージキャラクター「みきゃん」(右)らと私。店舗での新商品PRもアドバイザーの仕事

 大手流通グループ「イオングループ」の商業施設で、「マスターソムリエ高野豊セレクションコーナー」が設けられているのを見たことがあるでしょうか。私のコーナーがあるのは、私がイオングループのアドバイザーを務めているからです。きっかけは2002年ごろ、イオンがジャスコ上田店(当時)で開催した「長野県フェア」にさかのぼります。

 各地の農産物のブランド化をもくろんでいたイオンの担当者は、フェアの売り上げが計画に及ばなかったことから、県の農政課に相談したところ、「次回の長野県フェアを成功させる」推進役を私が引き受けることになりました。私は、イオンの基幹店の一つ、津田沼店(千葉県)で「長野県フェア」を開催することを第1条件に挙げました。フェアのオープニングに村井仁長野県知事(当時)が出席し、あいさつすることも条件に加えました。

 当時、イオンでは県知事がイベントのあいさつなどで来店すると社長と会食をする慣習がありました。知事に同伴した私は「この機会に長野県のワインを社長に飲んでもらおう」と考え、シャルドネとメルローの樽(たる)熟成、アイスワインの3種類を持参し、岡田元也社長(当時、現会長)に出しました。すると岡田社長は「これはおいしい」と驚き、メルローの樽熟成12本を購入してくれました。

 「社長はワインが好きなんだ」と知った私は、普段から行っていた市場調査をリポートにして提出してみようと思い付きました。リポートは、「ライバルのイトーヨーカドーとワイン売り場の品ぞろえが同じ」と指摘し、納入元の問屋とメーカーが一体となり、イオンとイトーヨーカドーでワイン売り場を展開しているからであり、「将来、業界ナンバー1を目指すならこの態勢を変えるべき」と提案しました。要約すると、(1)イオンが新会社を立ち上げ、海外のワインを独自に選び輸入する(2)国産ワインは、ノウハウを持っている弊社がお手伝いできる—という内容でした。

 社長はこのリポートを全役員に回覧し、商品担当部長が呼び出されるなど「ひと騒動」あったと聞きました。イオンは、「コルドンヴェール」というワイン専用の輸入会社を立ち上げ、ワイン売り場にはイオンの独自色が出始めました。現在、ワイン売り場はイオン独自の品ぞろえと私の目利きによるワインが9割を占めるようになっています。

 社長への直接提案をきっかけに、業界大手のイオンとのパイプができたことはとても大きな成果でした。「マスターソムリエ高野豊セレクションコーナー」が設けられたおかげで、私はオリジナルワインや厳選したワインをコーナーに並べ、リカー売り場の社員教育や、ワインや日本酒の専門家を育てる講習を今も続けています。こうしたことを重ねることで私は好意的に受け入れられました。

 岡田会長は社長時代から「地域の発展なくして世の発展なし」と言っていました。そして私は特産品を使った新商品で地域を元気にしたいと考えていました。全国各地に一つは特産品を作ってあげたい。そんな岡田会長と私の思いが重なったことも、私がイオンのアドバイザーを務めるようになった理由の一つだと考えています。私は今も定期的に、社長宛てのリポートを提出し、ワイン売り場を充実させる努力を続けています。

聞き書き・斉藤茂明


2022年8月20日号掲載