top of page

148 白馬大雪渓

雪上に吹く涼風を満喫

涼風を浴びながら雪渓の末端でくつろぐ登山者

 梅雨明け直後となった7月下旬の土曜日、山仲間たちと白馬大雪渓のトレッキングに出かけた。朝方の雨も雪渓に着く前には上がり、連日の猛暑を忘れて雪上を吹き渡る涼風を楽しんだ。

 大雪渓を訪れたのは2011年の秋以来。その時は雪渓を登り詰め、白馬岳直下の山荘に宿泊。翌朝山頂からご来光を見て、杓子(しゃくし)岳、白馬鑓(やり)ケ岳を縦走、鑓温泉に入って下山した。

 今年の大雪渓は大雨の影響などで至る所にクレバス(割れ目)が発生し、早々と7月初めに通行止めに。本来は雪上を歩き、お花畑が広がる葱平(ねぶかっぴら)まで行きたかったが、雪渓の末端にあるケルンまでしか行けなかった。


雨で増水した沢の木橋を渡る

 7時に長野市内を出発。そのころは晴れていたのに、五輪道路で小川村に入るころから雨が降り出した。白馬村に出ると雨脚が強くなり、途中の駐車場で1時間ほど車内待機。

 9時に再出発し、登山口の猿倉に着いた後、猿倉荘の軒下を借りてさらに1時間待機。スマホの雨雲レーダーでは11時過ぎに雨はやむとの予報だったので、雨具を着て10時半に歩き始める。

 うっそうとしたブナ林の中を登ると、間もなく幅の広い工事用道路に出た。白馬鑓温泉への登山口分岐を過ぎ、さらに進むと左手に大きな堰堤(えんてい)のある長走沢(ながしりざわ)に架かる木橋に。雨で増水した濁流の上を落ちないよう慎重に渡る。

 工事用道路の終点に着く前には、予報通り雨は上がった。休憩し、雨具を脱ぐ。霧も晴れてきて、向かいの山の稜(りょう)線も姿を現してきた。

 ここから山道に入る。何度か沢を渡りながら、両側から覆いかぶさるような丈の長い草地や灌木(かんぼく)帯の中を進む。


 間もなく、白ペンキで「おつかれさん! ようこそ白馬大雪渓へ」と書かれた大岩が現れる。以前はここに山小屋が2軒あった白馬尻だ。今は資材が置かれたままになっている。

 ここの広場から、上部に白馬大雪渓がよく見える。剱(つるぎ)沢、針ノ木谷と並ぶ「日本三大雪渓」の一つとあって、規模は大きい。休憩の後、目的地の大雪渓ケルンを目指す。

 登山道の脇には高山植物が目立つようになってきた。黄色いラッパ状の花を付けたオオバミゾホウズキやかれんなミヤマキンポウゲ、白いカラマツソウの群落、サンカヨウの透き通った花と並んで豪華なキヌガサソウも。

 あちこちに「立ち入り禁止」の看板が立つケルンの辺りが、大雪渓の末端だった。ここで昼食に。雪上に湧く水蒸気が涼風となって吹き寄せ、天然のクーラーのようだ。すぐ下には大きく割れた雪の下を雪解け水がごう音を立てて流れ下っていた。

 帰路、沢を渡る時はうそのように水量が減っていた。猿倉に着いた後、村内の温泉に立ち寄り、熱い湯に漬かって汗を流した。朝方の待機時間は長かったが、後半は天気も回復し、良いトレッキングになった。

 横内房寿


2024年8月10日号掲載

Comments


bottom of page