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140 白山

あこがれの加賀の名峰へ

御前峰から見下ろす白山の火口底

 猛暑が続いた8月上旬の週末、加賀の名峰・白山(はくさん)(2702メートル)に登ってきた。富士山・立山と並ぶ「霊山」であると同時に「花の百名山」でもある。信仰の山には高山植物の花々が咲き乱れていた。

 石川・福井・岐阜・富山4県にまたがる白山は、昨夏登った秋田・岩手県境の鳥海山とともに、以前から登ってみたかった。いずれも山体の大きさと花の多さが魅力だ。

 いつもの山仲間3人で、6時に長野市内を車で出発。坂中峠を越えて飯綱町に入り、信濃町インターから上信越道を北上。上越ジャンクションから北陸道を走り、富山を過ぎ金沢西インターを出る。

 そこからは一般道で白山国立公園市ノ瀬ビジターセンターへ。夏場はここで、登山口の別当出合まで行くシャトルバスに乗り換えなければならない。わずか20分だが、料金は片道800円。

荒々しい岩が折り重なる山頂部

 別当出合からは、右手の砂防新道と左手の観光新道の二つの登山道に分かれる。行きは砂防新道を上り、帰りは観光新道を下ることにする。

 11時半にスタート。霊山の領域へ入る鳥居をくぐり、いきなり長さ100メートル以上もあるつり橋を渡る。ブナ林の急坂を1時間ほど登ると、休憩場所の中飯場(なかはんば)だ。ここで昼食にし、次の休憩地点の甚之助避難小屋を目指す。太陽が真上から照り付け、額から汗が滴り落ちる。

 小屋に着いて外のベンチで休んでいると黒雲が湧き、間もなく大粒の雨がたたきつけるように降ってきた。慌てて小屋の中に入る。雷鳴が響き、いっこうにやむ気配がない。

 雨の中を今から登っても、夕食時間に間に合いそうもない。宿泊予定だった室堂ビジターセンターにキャンセルの電話を入れ、この避難小屋に泊まることにする。

 垂直のはしごを上り、2階の板の間で寝る。薄い夏用シュラフでは背中が痛く、3時間ほどで目が覚めた。外に出ると雨は上がり、満天の星が輝いていた。

 翌朝は4時過ぎに起床。5時から歩き始める。岩が石畳のように敷き詰められた道を登って行くと、シモツケソウ、ハハコグサ、ハクサンチドリなどの花が次々と現れてきた。

 中でも多いのはハクサンフウロ。北アルプスなどで見るピンクより紫が濃い感じだ。百花繚乱の風景を見ると、高山植物に「ハクサン」の名の付く花が多いのもうなずける。

 急なジグザグ道を登り詰めると、高さ5メートルもの巨岩「黒ボコ岩」に。この岩は白山火山の火砕流で運ばれてきたという。

山頂付近から見下ろす室堂平

 ここで観光新道と合流し、少し上ると風景が一変する。広大なササ原が広がる溶岩台地の弥陀ケ原だ。気持ちのよい木道を歩いていくと、ハイマツ帯の上りになる。

 その上が、やはり溶岩台地の室堂平だ。ここには室堂ビジターセンターなど五つの宿泊棟があり、収容人員は合計1200人という。ほかに白山比咩(しらやまひめ)神社の社務所があり、主峰の御前峰(ごぜんがみね)へは再び鳥居をくぐって登る。

 ハイマツ帯を抜け、岩と砂の急登を詰めると山頂の御前峰だ。ここには全国に3000社以上ある白山神社の総本宮とされる白山比神社の奥宮がある。

 見下ろすと、右手の剣ケ峰から正面の大汝峰(おおなんじみね)にかけての火口底に池が見える。周辺には大小の火口湖が幾つもあり、お池めぐりコースが整備されている。行きたかったが、時間がないため割愛。山頂からの景色を楽しんで下山にかかる。

 途中、室堂ビジターセンターで昼食に500円のカップヌードルを食べる。弥陀ケ原を経て、帰路は黒ボコ岩から観光新道へ。

 ここも上部は色とりどりのお花畑だ。殿ケ池避難小屋で休んだ後、長い下りに入る。足元は岩だらけのため、足を取られ3回ほど転んでしまった。

 結局、別当出合17時発のシャトルバス最終便に間に合わない羽目に。やはり乗り遅れた登山者を、許可を取って迎えに来た車に乗せてもらい市ノ瀬ビジターセンターへ。

 そこから車を走らせ、5時間余。途中のサービスエリアで夕食を食べ、帰宅したのは0時を過ぎていた。

 横内房寿


2023年9月2日号掲載

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