原生林の中の神秘な池へ
梅雨の晴れ間を選んで6月下旬の月曜日、高齢の山仲間3人で北八ケ岳の双子山(2224メートル)に登り、樹林の中に点在する池巡りを楽しんだ。
隣り合う蓼科山(2530メートル)や北横岳(2480メートル)を間近に望む。北八特有のこけむした原生林の中を歩く部分もあり、変化に富んだトレッキングコースだ。
7時に長野市内を出発。通勤の車による渋滞を避けるため、須坂長野東インターから上信越道を走る。小諸から中部横断道に入り、佐久南インターで降車。佐久市野沢から蓼科スカイラインで登山口の大河原峠へ。大回りだが時間短縮のためこのコースにした。それでも2時間半近くかかった。
9時半にスタート。まず双子山に登る。石だらけのガラガラ道で歩きにくい。中ほどの道の真ん中にケルンのある場所で休憩し、10時過ぎに山頂に。
ササ原が広がり、遮るものはない。ずんぐりした蓼科山や昨年登った北横岳、続く大岳の岩場もよく見える。だが、浅間山や北アルプスはガスで見えない。
小休止の後、双子池へ向かう。コメツガやシラビソの林の中の急な下りだ。足元に気を付け、30分ほど歩くと樹間に双子池ヒュッテの屋根が見えてきた。
まだ11時ごろだったが、ヒュッテの前庭でカレーライスを食べている登山者も。入り口に荷物を置き、二つある池のうち目の前の雄池(おいけ)を見に行く。澄んだ池の水はパイプでヒュッテに引き込み、飲料水にしている。
続いて、ほぼ同じ大きさの雌池(めいけ)へ。樹林に囲まれ、静かで美しい。高山チョウが舞い、水面にはアメンボが輪を描いている。双子のような池には男女の悲恋伝説もあるという。たもとのテント場の一つで、池を眺めながら昼食に。
その後の亀甲池までの間が大変。もののけ姫の舞台を思わせる、うっそうとした樹林の中に岩場が続く。コケに覆われた周囲の光景は美しいが、倒木や大きな岩が道をふさぐ中を乗り越えたり、すり抜けたりする。
尾根を越えると、一転して乾いた道に。間もなく亀甲池だ。この池は澄んだ水底にある幾つもの石が多角形に見え、カメの甲羅を思わせる。小高い山に囲まれた静かな池だ。
次の天祥寺原へ向かう途中、アッと驚く。登山道の脇に小さなミツバオウレンの花が一面に群がるように咲いている。よほど条件が良いのだろうか、ほかでは見られない光景だ。
その付近で仲間の一人が白骨化した動物の頭蓋骨を見つけた。小ぶりだが、シカのようだ。湿地帯の天祥寺原にはシカの足跡もあった。
最後は長いササ原の中を歩いて登山口の大河原峠に。帰路は女神湖から立科町へ下り、東御市の八重原温泉で汗を流して帰宅した。終始運転してもらった仲間に感謝。
横内房寿
2023年7月8日号掲載
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