12 原産地呼称管理制度

県が長野ワインを「認定」 ブランド力・認知度アップ

長野県原産地呼称管理制度の委員としての貢献が認められ田中県知事(当時)から贈られた表彰状を手にする私=2008年、池田町で

 2000年の県知事選で当選した田中康夫知事は、フランスの制度を手本に「長野県原産地呼称管理制度(NAC)」を提唱しました。長野県で生産・製造され、味と品質の優れた農産物と加工品のブランド化を強化し、消費者の信頼を高めるのが狙いでした。

 当時、私は日本ソムリエ協会の上信越地区長を務めていました。ワインが同制度の認定品目に入れば、長野ワインの評価が高まると考え、大きな期待を寄せました。しかし、なかなかNACの内容が具体的に伝わってきませんでした。しびれを切らして県の担当者に問い合わせると、制度設計が進んでいませんでした。

 全国初の試みということもあり、アドバイザー不在で混乱していたようです。県の担当者から「高野さん、手伝ってくれませんか」と相談されました。

 こうしてNACに関わることになった私は、ワインと日本酒を先行させるかたちで制度の原案作りに取り掛かりました。重視した委員の構成は、酒販店やレストラン、ワイン愛好家などの「消費者側」と、ブドウ栽培農家と醸造家による「生産者側」からなるようにし、人数もそれぞれ同数とすることで審査の公平性を確保し、NACの信用性を高めるようにしました。さらに、委員による審査会の様子を公開しました。目玉となる審査委員長には旧知の仲だったスターソムリエの田崎真也さんに就いてもらい、ワインファンを中心に世間の注目を集めるように仕掛けました。

 それから神戸市と山梨県、北海道を現地視察し、特にライバルとなる山梨県のワインブドウの状況は詳細に調べました。そこで、山梨県は温暖化の影響でワインブドウ栽培の最適地ではなくなっていくだろうということが分かりました。その点、長野県は冷涼な地域も多く、寒暖差もあることから栽培に有利になると確信しました。特に、温暖化でワインブドウの酸度が低くなり、酸を加える「補酸」が必要な山梨ワインとの差別化を狙い、長野ワインはこの補酸を認めないとし、品質の高さを強調するようにしました。

 私がアドバイザーを務めるかたちで、県の担当者と何度も打ち合わせを重ね、制度の原案や委員の構成など骨格づくりを2年でやり遂げ、02年施行へとこぎ着けました。

 現在、シャルドネやメルローなど、ワインブドウの生産量が日本一の長野県。要因の一つにNACがあります。長野ワインの味と品質を県が認定することでブランド力や認知度が上がり、人気も高まり、原料となるワインブドウの生産量が増えました。そしてNACが一つの契機となり、新規就農者の注目を集め、遊休農地の再利用や人口減少の歯止めに成功した自治体の一つが、ワインブドウの栽培適地だった高山村です。

 県外でもこのNACは注目を集めました。佐賀県有田市は特産品のミカンのブランド化ができずにいました。当時の有田市長が、「NACの制度を応用して、有田ミカンのブランドを高めて活性化したい」と、私に相談してきました。私は認証制度の中身を練り、審査委員長には日本を代表するパティシエの鎧塚俊彦さんに就いてもらいました。さらにこれとは別に、鎧塚さんが審査をする、有田ミカンを使ったスイーツコンテストを企画し、審査会と同日開催しました。

 このコンテストが注目を集めたことで審査会も知られ、有田ミカンの原産地呼称管理制度の周知にも成功しました。その結果、認証を受けたミカン農家の年収は倍増しました。

聞き書き・斉藤茂明


2022年7月23日号掲載