1人で末広町から新田町まで夜明け前のごみ拾い

深夜営業の食堂営むマンダムさん

早朝の長野駅前でごみ拾いをするマンダムさん
胸を張れる中央通りへ 「誰にでも変えられる」

 まだ夜が明けきらない4時ごろ、長野市の中央通りでごみ拾いをする一人の男性—。北石堂町で深夜営業の食堂を営むダイナマイトマンダムさん(42)=本名非公表=だ。毎朝、末広町から新田町まで歩き、歩道に捨てられたたばこの吸い殻や、ペットボトルなどを1時間ほどかけて拾う。店にほうきを取りに戻り、掃き掃除をすることも。昨年7月から、悪天候でない限り続けている。これまでに拾ったごみの数は8500個を超えた。

集めたごみの入ったビニール袋を手にするマンダムさん

 店を出して9年目の2020年、コロナ禍で客足が極端に減った。感染対策をして店を開いても客が一人も来ない日も。やるせない気持ちで店の外に出ると、誰かが捨てた食品の容器などが路上に散乱していた。頑張って開けている店の外で飲食してごみを放置していく人がいる—。やり切れない思いで、落ちていたごみを写真に撮ってたびたびSNSに投稿した。

 そんなある日、「自分が拾おう」と思い立ち、店の営業を終えた後にごみ拾いをするようになった。その頃、拾ったごみの写真を投稿して記録できるスマホアプリを知った。投稿するとほかの参加者からコメントが届く。続ける意欲につながった。

 ごみ拾いは「自分の楽しみであり、趣味の延長」と話すマンダムさん。歩いて帰宅する時の「ついでの活動」であり、誰かに影響を与えたいという思いはなかった。

 だが、ごみを拾いながら中央通りを歩くうちにいろいろなことが見えてきた。歩道に置きっぱなしの自転車。カラスがごみをつつき、散らかったごみをハトが人の目の届かないような場所に運んでいく。放置されたままののぼり旗の台やコンクリートブロック、朽ちた街路樹が景観を損ねている。粉じんや砂のたまった歩道の隅にはコケが生え、雑草が伸びている。マンダムさんは「人から見えにくい影の部分があると、そこにごみが捨てられることに気付いた」という。「根本的な部分を解決できないか」と、市に問い合わせ、改善を訴えた。

 路上に捨てられるごみは減らないが、マンダムさんのSNSを見て「自分もやろうかな」「始めてみたよ」とコメントする人が出てきた。マンダムさんは「捨てるのではなく拾う人が増えていくといい」。

 中央通りは多くの観光客が歩く善光寺表参道であり、市民にとっては生活道路。「(中央通りは)長野市のメインストリートだと胸を張って言いたい」とマンダムさん。「町を変えることは誰にでもできる」と話した。

 記事・写真 竹内章世


2022年6月4日号フロント