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PERFECT DAYS

=2時間4分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で12月22日(金)から公開

(C)2023 MASTER MIND Ltd.

役所広司が清掃員役 魅惑的で優雅な演技

 「パリ、テキサス」(1984年)、「ベルリン・天使の詩」(87年)の名匠ビム・ベンダース監督が日本の渋谷を舞台に紡いだヒューマンドラマ「PERFECT DAYS(パーフェクトデイズ)」。役所広司がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した話題作だ。

 東京・渋谷—。毎朝決まった時間に起床し、身支度を整え仕事場に向かう。公衆トイレの清掃員、平山(役所広司)の日常は規則正しく過ぎてゆく。トイレを完璧に磨き上げ、仕事を終えた後の銭湯、定食屋での食事。寝床につくと本を読み眠る。そして朝を迎え、仕事場へ。平山の日常に小さな変化をもたらすのは同僚の若い清掃員。仕事より私生活優先の今どきの若者だ。ある日思わぬ客が訪れる。

 小さなアパートの整然とした部屋にわずかな家財道具。本棚には読み終えた文庫本が並ぶ。必要最低限のものに囲まれた暮らし。ぜいたくとは無縁なシンプルさが際立つ静かなたたずまい。宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」をふと思い出す。

 都会の喧噪(けんそう)がうそのように、穏やかに時が流れてゆく。カセットテープから流れる懐かしい曲に耳を傾け、ほほ笑みを浮かべながらふと見上げる空。平山が愛する光と風の揺らぎと木漏れ日が、一瞬の美しさを捉えて離さない。ささやかな楽しみが、豊かさの本質とは何かと問い掛ける。

 寡黙で怒りや感情をそぎ落としたような平山の生き方は、例えれば禅の境地なのだろうか。同じように見えて一日たりとも同じ日はないことを、この映画は教えてくれる。

 ベンダース監督が思い描いた人物を演じるのではなく、スクリーンの中で平山自身を生きた役所広司にもたらされたカンヌ映画祭受賞の栄誉。「役所広司の演技は魅惑的で優雅である」という賛辞にふさわしい。

 渋谷区には個性的でユニークなトイレがあることを映画を通して初めて知った。世界的に著名なクリエイターや建築家にデザインを依頼したのだそうだ。ここも聖地巡礼のメッカになるのだろうか。

 東京オリンピック閉会式でパフォーマンスを披露した松本市出身のダンサー、アオイヤマダが若い女性役で出演している。米国アカデミー賞国際長編部門、日本代表作品。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年12月16日号掲載

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