鬼無里の地域おこし隊員 木原貴之さん

支障木から抽出したエッセンシャルオイル


5月29日・6月26日のイベントで対面販売       「活動に共感してもらえれば」
捨てられる木「かわいそう」

 長野市内で支障木や危険木として伐採された樹木を活用してエッセンシャルオイル(精油)を作り、インターネットなどで本格的に販売を始めた鬼無里地区の地域おこし協力隊員木原貴之さん(48)。5月29日(日)、6月26日(日)には、善光寺御開帳に合わせ、セントラルスクゥエアで開く「地域おこし協力隊市」に出店を計画。「自分の思いを直接お客さんに伝えられる場。活動に共感してくれる人がいればうれしい」と初の対面販売を楽しみにしている。

 木原さんは東京都出身。高校卒業後、都内で通信関連の会社に勤めた。45歳の時、以前に出張で訪れた長野の自然の中で仕事がしたいと、地域おこし協力隊員に応募。2020年1月から「薪(まき)を活用した地域循環の仕組みづくり支援」をミッションに同地区に着任した。

 地元のNPO法人が運営する薪ステーションでまき割りに携わった後、木に登って伐採する「特殊伐採」の技術習得を目指して、町なかの支障木の伐採を手掛ける協力隊OBの仕事を手伝っている。

 そんな中、人の都合で植えられ、支障木として切られ、捨てられる木を「かわいそう」と強く思うようになった。考え付いたのが廃棄物として捨てられるだけの枝葉から、県林業総合センターで学んだドラム缶を使った装置で精油を抽出する方法だ。セミナーで習った蒸留器を、薪を燃やせる仕様に改良して自作し、昨年6月から精油の製造を始めた。

 1回の作業は1日がかり。伐採で持ち帰った枝葉を粉砕機にかけ、下部に水を張った容量200リットルのドラム缶に入れる。支障木の幹を薪にして燃やし、発生させた蒸気に精油分を取り込んで冷やして分離、抽出する。約60キロの枝葉から、スギやサワラなど多いもので約200ミリリットル、カラマツでは約100ミリリットルが抽出できるという。これまでに7種類を製造。製品には、土地につながる香りであることを知ってもらおうと伐採された場所や経緯などの説明を付けた。最初に購入した人は、かつて親子で遊んだ場所を懐かしんで注文してくれた。

 「温室効果ガスである二酸化炭素を吸収するとともに、長い間地域の人たちの生活を見守ってくれた木々の最後の恵みである香りを届けたい」と木原さん。今年は協力隊の任期最終年。任期が終わってからも鬼無里で木の伐採を生業に暮らしていく覚悟だ。

 商品は木原さんのECサイト「treefieldwork.stores.jp」で購入できる。

記事・写真 中村英美


2022年5月21日号フロント