豊野町・戸隠村・鬼無里村・大岡村の旧4町村
地域住民サービスの向上 市全体のブランド力アップ
進む人口減少・高齢化
行財政基盤の強化と地方分権の推進に対応することを目的とした「平成の大合併」。長野市はきょう1月1日、豊野町、戸隠村、鬼無里村、大岡村の旧4町村と合併してから20周年を迎えた。豊野、戸隠、鬼無里、大岡の4地区に関して、合併による具体的な成果や今後の課題などについて市企画政策部企画課に聞いた。
まず挙げられるのが地域住民サービスの向上。保育所や体育施設について市全域が利用対象となり、住民票は市全域の支所で発行可能になった。また、おでかけパスポート事業など福祉関係サービスが充実。市が独自に行っていた就農支援策などの利用もできるようになった。
施設インフラなどでは、豊野は豊野駅周辺が整備されたほか鶴賀消防署分署が開設。戸隠は戸隠保育園を新設。鬼無里は支所庁舎の中に公民館や農協を統合して利便性が向上。無電化地域であった奥裾花自然園に小水力発電など再生可能エネルギーを導入して安定した電力需給を構築した。大岡は芦ノ尻御曹司橋線の改良を行った。
観光面では、市のスケールメリットを生かして市全体として戸隠スキー場や奥裾花自然園をPRし集客につなげている。
住民意識の変化という点では、各地区で住民主導による地域課題解決に向けた組織づくりや、歴史や伝統を後世に伝えていく意識が高まるなど、地域住民が積極的にまちづくりに参画するようになった。
市全体の合併の成果としては、観光資源の多様化や伝統的な食文化により市自体の魅力が増えてブランド力が高まったといえる。また、国の施策として進められた市町村合併では、国や県からの財政的支援を最大限活用して、市芸術館、北部スポーツレクリエーションパーク、斎場などの大規模施設や道路網が整備された。消防車両や防災情報システムも整備され、防災面でもまちづくりが進んだ。
課題は、合併した4地区に限らず、特に中山間地域を中心に人口減少、高齢化が進んでいること。担い手不足による地域活力の低下や、地区内外の移動に必要な公共交通網の維持など、早急に対応すべき課題に直面している。防災、福祉、医療などの合併地区での機能確保も課題だ。
20周年の記念事業は、昨年各地区で住民自治協議会と各支所とが連携して実施した。昨年秋、合併後に生まれ育った子どもたちに地域の魅力を伝えるために市が実施した各地区を巡る親子バスツアーでは、合併地区の魅力についてまだまだ市内外にPRしていく余地があることが分かったという。今後も合併地区を含めた市全体の魅力を発信する事業を検討していく。
記事・写真 中村英美
2025年1月1日号フロント