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里親増やしていける場所に

里親養育包括支援機関の業務本格始動

新たに開設した善光寺大本願乳児院フォスタリング機関事務所で打ち合わせをする職員ら
児童福祉施設「善光寺大本願乳児院」

 箱清水の児童福祉施設「善光寺大本願乳児院」はこのほど、フォスタリング(里親養育包括支援)機関の業務を本格始動した。「里親制度」を知ってもらうための広報をはじめ、里親の募集や説明会、研修、養育支援まで、里親に関わる一連の支援を一貫して行う。施設職員で里親総合支援員の清水恵さん(39)は「一人でも多くの地域の人たちに里親のことを知ってもらい、その成り手を増やしていける場所になれば」と期待する。

 本年度、県からフォスタリング事業を受託。これに伴い、施設近くに新たに事務所を開いた。

 2016年の児童福祉法の改正で、子どもの家庭養育優先の原則が明記され、家庭で適切な養育を受けられない場合は、家庭と同様の養育環境となる里親委託を推進する方針が示された。以降、それまで都道府県の児童相談所が主体となっていたフォスタリング業務を、乳児院など民間に委託するかたちで広げている。中央児童相談所管内、北信地域では同事業の受託は同施設が初めて。

 同施設によると、さまざまな事情で親と離れて暮らす0歳から18歳までの子どもは全国では約4万2千人、県内では約600人。このうち22年度には、県内で実際に里親に委託されたのは112人で、委託率は20%にも満たない。里親委託率が増えない要因を同施設は「里親とその制度が一般に知られていないことが大きい」とする。

 まずは里親制度とともに、里親の中でも、養子縁組を目的とせず、子どもが必要とする期間(数日、数年など)家庭で預かる「養育里親」のことを知ってもらうことに重点を置いた取り組みをしていく計画。事業のスタートとともに養育里親募集のポスターとチラシ合わせて2900枚を作り、施設近隣のスーパーやコンビニ、商店、市支所や小児科などへ配布して掲示の協力を依頼した。

 「一定期間、できるだけ家庭的な養育で愛着関係を築くことが子どもの心と体の発達に大切。家庭で過ごせる子どもたちを増やしたい」と同施設の黒岩章彦院長(65)。「里親に少しでも興味があれば気軽に相談に来てほしい」と話す。

 里親制度の普及や啓発を推進する「里親月間」の10月は21日(月)から24日(木)、各日10時から15時まで市役所の市民交流スペースで「第1回里親制度説明会」を開催する予定。パネル展示や里親専門相談員が制作した里親制度に関する動画なども紹介する。

 (問)善光寺大本願乳児院フォスタリング機関☎︎217・6351

 記事・写真 中村英美


 

【里親制度】 児童福祉法に位置付けられた、家庭で暮らせない子どもを必要な期間、県が認定した人が家庭に迎え入れて養育する制度。子どもの生活費など一定の金額が公費で支給される。


2024年8月31日号フロント

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