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落下の解剖学

=2時間32分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中。

(C)2023 L.F.P.-Les Films Pelléas/Les Films de Pierre/France2 Cinéma/Auvergne‐Rhône‐Alpes Cinema

事故か自殺か殺人か 巧みな展開の法廷劇

 人里離れた雪山の山荘で、1人の男の死体が発見された。第1発見者はその男の11歳の息子。はじめは事故死と思われたが次第に妻に疑いの目が向けられる。事故か自殺か、それとも殺人か。「落下の解剖学」は、2023年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドール賞を受賞したヒューマンミステリーだ。

 白い雪と青空のコントラストが美しい雪山の山荘に悲鳴が響き渡った。屋根裏を修理していたサミュエルが転落死していたのだ。家族の通報を受け警察がかけつける。検視をするが原因は不明。もし他殺なら状況から犯人は妻のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)しかいない。息子のダニエルは交通事故が原因で視覚障害があり、事件発生時の記憶は曖昧だ。犯人も死の真相も分からないまま、サンドラは逮捕され裁判が始まった。

 夫はフランス人の教師、妻はドイツ人でベストセラー作家。国際結婚の夫婦は家庭での会話は英語だった。サンドラにとって母国語でないフランス語で裁かれる不利な状況が続き、聞き取れない内容にいら立ちを見せる。

 しかも法廷に立つ証人たちがそれぞれの視点で語るたびに、知的な作家から強圧的で傲慢な妻へと、サンドラの人格も印象も入れ替わってゆく。夫婦関係が破綻していたことも次第に明かされてゆく。飾られた家族写真がまるで証拠写真のようだ。若き日の恋人同士の2人、作家として成功した自信に満ちた顔。巧みなストーリー展開が法廷劇の面白さを増幅させる。

 フランス生まれの女性監督ジュスティーヌ・トリエは、ヒュラーをイメージして脚本を書いたそうだ。同映画祭で、驚くことにヒュラーは、パルムドール賞の「落下の解剖学」だけでなく、次席のグランプリを受賞した「関心領域」でもヒロインを演じ、カンヌで最も注目を集めた演技派俳優となった。

 少年の愛犬役のボーダーコリー犬がパルムドールドッグ賞を受賞。犬ながら見事な演技も見逃せない。

 ゴールデングローブ賞で脚本賞受賞、米アカデミー賞でも脚本賞を受賞した。

 余談だが、ロケ地グルノーブルは1968年冬季オリンピック開催地。記録映画「白い恋人たち」で映画音楽の名曲が生まれている。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年03月16日号掲載

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