ワイナリーの設立を目指す 玉井勝浩さん 飯綱町

IT企業退職し家族で移住
「驚いています。応援してくれた人の期待を裏切らないように頑張りたい」。ワイナリー設立の夢実現へ踏み出した飯綱町の玉井勝浩さん(32)。ワイン用ブドウの苗木300本分の費用をクラウドファンディング(CF)で募ったところ、1カ月で目標金額60万円の約2倍が集まり、意気軒高だ。
長野市内のリンゴ農家に生まれた。長野高校、京都大学を卒業後、就職、結婚と、安定した生活を送ってきたが、ワイナリー設立を決意し、2020年に勤めていた都内のIT企業を退職して家族3人で移住。個性の異なる二つのワイナリーで栽培・醸造を学んだ。27年のワイナリー設立に向けて昨年独立した。
異色の方向転換に、妻の麻莉さんは「『ワイン造りをしたい』と聞いた時はびっくりして、けんかもしたけれど、真面目さだけは認める」。「誰よりもワイン造りへの情熱は熱く、各種のデータを分析する目は冷静」とワイナリーの元同僚が評するように、ワインに向き合う誠実さは周囲の誰もが同意する。
0.6ヘクタールの畑にピノノワールを栽培し、今回CFで集まった費用で購入したシャルドネやガメイを加える。将来的に1.5ヘクタールに面積を拡大し、年間約5千本を目標にワインを造りたい考えだ。「ワインの魅力は香りや味わいに、土や日当たり、風、水など土地の個性が出ること。この3品種は土地の風土を反映しやすい」と、ワイン造りでは豊かな自然にほれ込んだ飯綱町を表現するつもりだ。
4月22日に開いたワイン用ブドウの苗木植栽イベントには首都圏からも含めて定員10人を超える15人が参加した。「ワイン用ブドウが作られる飯綱町の雰囲気を、多くの人に感じてほしい」。ワインをきっかけにさまざまな交流が生まれるように積極的に交流イベントを打っていく。
接ぎ木でこだわりの苗木を作り、野生酵母で発酵させるなど、「自分が信じる手法で栽培・醸造していきたい」と話す一方、地元の人の応援やCF、植栽イベントなどを通して「自分だけのワイン造りではなくなった」とも。今秋、初収穫となるピノノワールを委託醸造し、来年には待望のワイン80本を初リリースする計画だ。
記事・写真 斉藤茂明
2023年4月29日号フロント