聴覚障害者も安心ゲストハウス
- 6月28日
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ろう者の竹花さん今秋開業計画

善光寺近くの東之門町に 各国の手話、言語などで応対
善光寺近くの東之門町。かつて魚屋だった築100年の空き家が今秋、聴覚障害者が安心して泊まれるゲストハウスに生まれ変わる。ろう者の竹花亮介さん(31)が借り、開業準備を進めている。
1階に宿泊者が集まれるラウンジやキッチン、バーを造り、2階は4部屋で定員14人。トイレ内の明かりから使用中かどうか分かる小窓をドア上部に設けたり、手話が見やすいように照明を明るめにしたり、聴覚障害者に配慮する。また、長野県の自然や温泉、食など観光案内もする。竹花さんが、日本語手話、アメリカ手話、ニュージーランド手話のほか、日本語や英語、音声認識アプリなどで応対する。
岡谷市出身。生まれつき耳が聞こえなかった。地元の小中高校に通い、クラスメートの話の輪に入れず、寂しい思いをしたことも。高校卒業後に下諏訪町の電力会社に就職。熱心に仕事に取り組み、休日には車で友人らと旅行に出かけるなど、活動的になった。夢だった海外生活をするため、3年間勤めた会社を辞め、ニュージーランドに1年間滞在。現地では、ろう者のコミュニティーに頻繁に通い、英語よりも手話の方が安心でき、楽しく交流ができた。帰国後は、県聴覚障害者協会の職員として手話の普及活動や災害支援にあたった。「台風19号水害」の被災地で聴覚障害者をサポートした際には、張り紙などの視覚情報の少なさを感じた。
旅行が好きで、ゲストハウスもよく利用したが、人が集まるラウンジなどでは、子どもの頃のように孤立を感じることもあり、聴覚障害者が安心して過ごせる宿をつくりたいと決意。ゲストハウス特有のさまざまな人が集まり交流する中で、聴覚障害者への理解を深めていきたいという。
今までアジアを中心に10カ国以上を旅し、中でもタイと台湾は印象深い。「自分がろう者だと分かっても緊張したり面倒くさがったりせずに、身振り手振りを交えて自然に接してくれて心が通い合った感じ。そんな雰囲気のゲストハウスにしたい」
もう一つ、目指したいことがある。「子どもの頃、ライオンの飼育員や俳優、映画監督など、多くの夢があったけれど、耳が聞こえないことを理由に諦めてきた。聴覚障害の子どもたちには、夢はかなえられるというロールモデルになりたい」と話す。
善光寺近くの立地に加えて、通りに面した一面のガラス戸が気に入っている。「室内で、手話が飛び交っている様子が外から見えるようにしたい。夜には、宿泊者以外も利用できるバーも設けるので、気軽に寄ってほしい」と呼びかける。
現在、改修費用に充てるため、クラウドファンディング(CF)で資金を募っている。CFサイト「キャンプファイヤー」で7月7日(月)まで。
記事・写真 斉藤茂明
2025年6月28日号フロント