山と自然のサイエンスカフェ

10年目を迎える県環境保全研究所
長野県の環境保全や自然保護などの調査や研究に取り組む「県環境保全研究所」が、学習交流事業の一環で2014年に始めた「山と自然のサイエンスカフェ@信州」が本年度10年目を迎える。同カフェは、研究所の研究員を中心に大学の教授や国の研究機関の研究員らが話題提供者となり、それぞれが設定したテーマで話した後、参加者らと気軽に話し合う交流の場として定着してきた。
長野市内を会場に、昨年度まで9年間に通算57回が開かれ、延べ2100人を超える一般県民が参加した。コロナ禍以前は年8回ほど開催。この3年間はオンライン開催も含めて2〜3回だった。本年度は5月31日(水)を皮切りに来年2月まで4回を計画する。

本年度初回の話題提供者は同研究所自然環境部技師の葉田野希さん(32)。地層の成り立ちを調べる「堆積学」の研究者だ。古い時代に生成された土壌「古土壌」を調べることで、過去の地球の陸上の環境変動を解き明かす研究に取り組んでいる。現在は諏訪盆地とその周辺の古環境を解明するための研究を進める。今回は「土壌からみた今昔」をテーマに問御所町の「くらしふと信州」で開催。定員20人(定員に達し次第受け付け締め切り)。無料。
昨年約2週間、ヒマラヤ・チベット高原で1000万年前から200万年前までの地層の中の古土壌を調べて分かった、モンスーンや日本の梅雨など気候条件などについて紹介する。「自分が研究対象として面白いと思っている古土壌のことを伝えたい」と葉田野さん。研究者の立場からサイエンスカフェは「研究者からは投げかけられないような疑問・質問が出て、新鮮な発見や自分では思いつかない問題が見えてくることもあり、貴重な機会と感じている」という。

同研究所自然環境部長の須賀丈さん(58)は「自分たちがやっていることの届く先がイメージしやすくなった」とサイエンスカフェ開催の手応えを感じている。「サイエンスを面白がる文化を広めたい」と話した。
記事・写真 中村英美
2022(令和4)年度の開催実績
第1回 6月4日「池沼に侵入したクラゲとザリガニ」
第2回 7月2日「高山帯のお花畑を訪れる蝶たち」
第3回 10月12日「信州の生物多様性2030年に向けて」
2023(令和5)年度の開催日程
第1回 5月31日(水)「土壌からみた今昔」 場所/くらしふと信州
第2回 6月28日(水)「シカのはかり方」 場所/県立長野図書館3階「信州・学び創造ラボ」
第3回 10月18日(水)「花の上で数万年暮らし続けるとどうなるか」 場所/くらしふと信州
第4回 令和6年2月14日(水)「野火と縄文草原」 場所/県立長野図書館3階「信州・学び創
造ラボ」
時間は各回17時半から。参加希望者は事前申し込みが必要。同研究所ホームページ内の「ながの電子申請サービス(長野県)」からか電話で申し込む。
(申)(問)同研究所自然環境部☎︎239・1031
2023年5月27日号フロント