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私がやりました

=1時間43分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で29日(金)から公開

(C)2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES - PLAYTIME PRODUCTION

新人女優に殺人容疑 元女優は「真犯人」名乗り

 1930年代のパリで起きた大物映画プロデューサー殺人事件。新人女優に容疑がかけられるが、裁判をきっかけに一躍人気スターにのし上がる。そこに現れた真犯人を名乗る女性—。フランス映画「私がやりました」は、1934年に大ヒットした戯曲「真実の告白」を基にしたコメディータッチのクライムミステリーだ。

 大物映画プロデューサーがパリの自宅・豪邸で死体で発見された。容疑をかけられたのは売れない新人女優のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)。殺人の動機は役と引き換えに愛人関係を迫られたこと。自身の身を守るためという若き美女の告白に世間は同情し、裁判の傍聴席には大勢が押し掛けた。悲劇のヒロインとして有名になったマドレーヌに映画や舞台の出演依頼が舞い込み、スターへの階段を駆け上るが、真犯人を名乗る元女優が現れたことで事態は思わぬ様相を見せ始める。

 約90年前の作品でありながら、ジェンダー問題など現代と共鳴する脚本に仕上げたというフランソワ・オゾン監督。この作品に登場するのは、マドレーヌら自立を目指す意志の強い3人の女性。マドレーヌの親友で、裁判に敢然と立ち向かう弁護士ポーリーヌを演じるのはレベッカ・マルデール。そしてトーキー時代の元大物女優オデットに扮するのは演技派のイザベル・ユペール。ウイットに富んだせりふのテンポの小気味よさ。丁々発止の展開から目が離せない。

 映画の中の映画、映画の中の舞台と、常に演じている女性たちの心理を彩るのが洗練された衣装の数々。オゾン監督作品らしく計算されたカラーコーディネートのセットが、楽しませてくれる。

 被害者でありながら、同情の余地がないのが、プロデューサーだ。役を餌に関係を迫るという許しがたい行為が百年前から横行し、芝居にまでなっていたという驚き。ハリウッドから始まった「#MeToo(ミーツー運動)」の、元凶となった大物プロデューサーを彷彿(ほうふつ)とさせる。

 オゾン監督が女性の魅力的な生き方を探求した3部作と位置付け、「8人の女たち」(2002年)、「しあわせの雨傘」(10年)に続く最終章と定義した作品で、一筋縄ではいかない、したたかな女たちが輝きを放っている。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年12月23日号掲載

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