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県立美術館で「池田満寿夫」展

世界へと「とびたつとき」〜 同時代の作家らの作品も

内覧会でベネチア・ビエンナーレ受賞作品の解説をする池田さん

 箱清水の県立美術館は「とびたつとき〜池田満寿夫とデモクラートの作家」展を開いています。

 マルチアーティストとして活躍した池田満寿夫さん(1934〜97年)が、版画家として歩み出した50年代から66年のベネチア・ビエンナーレ国際美術展の版画部門国際大賞の受賞で世界的に脚光を浴びるまでの作品と、同時代に池田さんも活動した「デモクラート美術家協会」の9人の作家らの版画作品合わせて約280点を展示。当時世界を席巻した日本の版画を振り返ろうという展覧会です。

 池田さんは旧満州(中国東北部)の生まれ。終戦の1945年に父母と共に長野に引き揚げてきました。長野北(現長野)高校卒業後の52年に上京して東京芸大を受験するも3年続けて失敗。その頃出会った靉嘔(あいおう)さんを介して、デモクラート美術家協会を創設した瑛九(えいきゅう)と知り合います。池田さんは瑛九の勧めで銅版画の制作に打ち込むようになりました。

 展示は「デモクラートとの出会い」「起点としての瑛九」「夜明けまえ」「それぞれのとびたつとき」「池田満寿夫 とびたつとき」の5章で構成。それぞれの作家たちが試行錯誤しながら自らの表現を追い求め、やがて羽ばたいていくまでの作品が年代を追って並びます。

 最終章では、銅版画に取り組む池田さんが第2回東京国際版画ビエンナーレ展で文部大臣賞、第3回展で東京都知事賞、第4回展で国立近代美術館賞、ベネチア・ビエンナーレで国際大賞を受賞するまで、飛躍の時を迎えた池田作品64点を紹介しています。65年に日本人で初めてニューヨーク近代美術館で開いた個展の展示を再現したコーナーも。

 学芸員の池田淳史さん(27)は、「池田満寿夫が銅版画を制作して、自分のスタイルをつくり出そうと模索して世界に羽ばたいていく過程を見てほしい」と話していました。

 11月5日(日)まで。休館日は毎週水曜。開館時間は9時から17時。観覧料は一般800円、大学生と75歳以上は600円。高校生以下無料。

 (問)同館☎︎050・5542・8600


2023年9月30日号掲載

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