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生きた証しを未来に残したい

米山四郎さん(77)が13冊目の自著

作業場で「創業六十年 ダンプ三十年」を手にする米山さん

 長野市吉田で建築業を営む米山四郎さん(77)がこのほど、「創業六十年 ダンプ三十年」を自費出版した。13冊目の自著。仕事のほか、趣味のゴルフや旅行、病気による通院生活など、日々の生活の中で気付いたことを短編10章にまとめた。飾らない文章に写真やイラストを載せ、読みやすい構成となっている。

 米山さんが初めて本を出したのは1998年。書きためていた日記を読んだ知り合いの編集者から書籍化を勧められた。中学時代から日記を書くのは日課になっていた。22歳の頃、思い立って原稿用紙に書き始めたが、かしこまった作文になってしまった。チラシの裏にしてからは、気楽に書けるようになったという。70歳からはパソコンを使い始め、「保存や修正が楽で便利」と、書くことが一段と楽しくなった。

 跡取りと考えていた一人息子を15年ほど前に病気で亡くし、孫もいない。本作は「孫に残したいとの思いで書いた」といい、「孫を未来に例え、米山四郎という人間がいた証しを本にして未来に残したかった」。

 今年、入社13年目の(旧姓・本道)章さん(33)が米山さんの養子になった。「章から養子になると聞いた時はうれしかったよ」と、破顔一笑する。「一人前の大工、経営者に育てるのが今の責任。そして嫁さん探し。結婚して子どもが生まれれば、この本を本物の孫に残せる」。

 本作のタイトルは章さんのアイデアだ。「30年乗り続けたダンプをちょうど買い替えたところ。創業は60年以上たっているけれど、まあいいよ」と笑う。章さんという、子どもであり、後継者ができ、77歳の喜寿の年に新たに一冊出せたことは「節目の年に幸せなこと」と振り返る。

 本を出すと知人から、「読みやすい」「職人さんらしい義理と人情が感じられる」という感想の手紙が届く。「うれしいね。次への励みになる。頑張っているということを伝えられれば」。14作目に向け、今も日々の出来事を書きためている。

 A5判、91ページ。1650円。

 (問)建築のよねやま☎︎241・6232

 記事・写真 斉藤茂明


2023年9月30日号フロント

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