東京2020オリンピック SIDE:A SIDE:B

=2時間 長野グランドシネマズ☎︎233・3415

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異例尽くしだった五輪  二つの側面から記録

 2021年7月27日から17日間にわたって史上最多となる33競技339種目が行われた「東京2020オリンピック」。あれから間もなく1年。河瀬直美総監督による公式映画が完成した。

 13年、東京が五輪開催都市に決定後、かつてないほど何度も「選択」を迫られた。マラソンと競歩開催地の札幌への変更。森喜朗会長から橋本聖子会長へ組織委員会トップの交代。何といっても新型コロナウイルス感染症の世界的流行で史上初の1年開催延期。コロナ過の中、ほぼ無観客で開催された。

 映画は、「人生の金メダリスト」をテーマに、表舞台にたつアスリートたちの闘い「東京2020オリンピック SIDE:A」(長野グランドシネマズで公開中)と、非アスリートたちを捉えた「東京2020オリンピック SIDE:B」(6月24日(金)公開)の2部作。開催に至るまでの750日間、5000時間に及ぶ膨大な記録を基に、二つの側面から、異例尽くしだったオリンピックをまとめた。

 躍動する筋肉や金メダルへの熱い闘いを描いた、これまでのオリンピック記録映画にみられる作風と違い、女性監督ならではの視点で捉えたシーンが目を引く。出産し母乳を与えるために赤ちゃんを伴って家族で参加する女性アスリートもいれば、出場を諦める女性アスリートもいる。意地を見せるのは公式競技に復活した女子ソフトボールのベテラン選手だ。

 日本の「お家芸」という重圧のかかる柔道から、新たな正式種目まで、アスリートたちの真剣勝負と競技場の熱気が伝わってくる。気迫に満ちた「形(かた)」の演武に張り詰めた会場の空気が震える。空手発祥の地、沖縄の伝統を守ろうとする人々の誇りに満ちた顔。高難度の技で世界トップレベルに果敢に挑むスケートボード10代の少女たちが輝く笑顔を見せる。

 非アスリート側を捉えたシーンでは、オリンピック賛成側だけでなく、オリンピック中止を叫ぶデモ隊も登場。ほかに、新型コロナから命を守るため大会開催中も日夜働く医療従事者など、カメラはさまざまなシーンを実直に映し出す。事実は事実として残してゆく記録映画としての毅然(きぜん)とした姿勢がある。

 作品は時代の記録であり、忘れてはならない記憶、そして証言者となった。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年6月11日号掲載