新作能「きじも鳴かずば」が完成

久米路橋(信州新町)にまつわる悲しい民話

物語の舞台・久米路橋
作者は地元出身の能楽師永島充さん          「数年のうちに能として公演したい」
3月19日に謡曲初披露

 信州新町と信更町の間の犀川に架かる久米路橋には、悲しい民話「きじも鳴かずば」が残っている。信州新町出身の能楽師・永島充さん(53)=東京都=はこのほど、民話を題材に新作能「雉も鳴かずば」を作った。3月19日(土)、初めて謡曲として同町で披露する。

 進学先の東京都内の大学で謡曲部に入り、能に魅せられた永島さん。卒業から5年間、能楽師の観世喜之さん宅で住み込み修業。その後は観世流シテ方能楽師として、東京や長野で公演や指導を行っている。

 故郷を舞台にした民話を能にする構想は、長年温めてきたという。10年ほど前から、帰郷した時に久米路峡の景色を眺めたり、文献を読んだりして原案を作成。試作を同町で開いた弟子の発表会などで披露し、聴いた人の意見を取り入れるなど数年がかりで推敲を重ね、昨年完成させた。

新作能を作った能楽師の永島充さん

 上演時間は約30分。諸国を行脚する旅人(ワキ)が久米路橋にさしかかると、若い女(シテ)が現れ、橋にまつわる悲しい物語を語り、供養の舞を舞う。舞い終えた女は、月に照らされた河畔のカエデのシルエットに、父の幻を見る—。

 永島さんは最後の情景を、女性を主人公にした世阿弥の名作「井筒」などを参考に創作したという。「父親の幻を見ることで、女の悲しみ、苦しみに救いがもたらされる」。思いを込めたシーンだ。

 19日の披露会は、地元の愛好家でつくる信州新町謡曲連合会が開催。会員の素謡、観世流能楽師による仕舞の披露に続き、新作を謡曲として披露する。シテは永島さん。

 今回は新型コロナ対策で地元の少数の観客以外は原則受け付けないが、「数年のうちに、衣装と面を着け、はやしも入った能として、大勢の人に見てもらえるようにしたい」という。「作品の良しあしは自分では分からないが、かたちにしたことに意義があると思う。長野以外でも繰り返し演じられる能になり、物語が脚光を浴びればうれしい」

 同連合会は、新作能の詞章と民話や に関する資料をまとめた記念冊子を発行。希望者に販売する。1冊2千円。

 (申)(問)信州新町地区住民自治協議会☎︎262・4792


記事・写真 竹内大介


2022年3月5日号フロント