5月3日 里曳きと建て御柱

氏子は計69戸 男柱と女柱奉納 山出しと縄作り助け合い
「私が暮らす戸隠祖山にある南方(みなかた)神社で行われる御柱祭は、男柱と女柱を奉納する祭りですが、なんとわが家が女柱の奉納者となりました」。以前取材で知り合った宮下京子さんからメールが届いた。「わが地域は高齢者中心ですが、まとまりが良いというか、全員参加型の手作り満載のあったかい御柱祭になること間違いなし…です」。今年はあちらこちらで御柱祭が行われるが、宮下さんの言葉に心引かれて、4月17日の女柱の山出しを取材した。

南方神社(戸隠祖山)は、16世紀後半の建造とされる本殿が県宝に指定されている。氏子は「平連(たいられん)」(43戸)と「東連」(26戸)の二つの組に分かれ、今回の御柱祭では平連が男柱、東連が女柱を奉納する。4月2日に祖山の油水地籍の山林で御柱の見立てをし、10日に安全祈願祭と伐採を行った。17日、長さ9.64メートル、重さ1.6トンほどの女柱の山出しに53人が集まった。
木やりの後、拍子木の合図と、音頭取りの「よいとまけー」の掛け声に合わせて、木製の棒を手にした「てこもち」の役者が女柱と共に進んだ。通常は人力で曳行するが、コロナ禍の中、人が密になるのを防ぐため、女柱奉納者の宮下稔さん(69)宅までの約200メートルはほとんど重機で運んだ。カーブのある細道で苦労しながらだったが1時間ほどで到着した。

「今回の奉納者にと、一昨年末に神社役員から声が掛かった時は気が引き締まる思いがした。準備は大変だが、みんなが協力してくれてありがたい」と稔さん。御柱は、里曳きと建て御柱が行われる5月3日まで奉納者の家で安置される。
山出しと同時進行で行われた縄作りは、長さ30メートルの5本の縄を三つ組みにしてねじり合わせるため、多くの人の手が必要な作業。参加した鈴木秀子さん(77)は、「年を取ってなかなか体が追い付かないけれど、奉納者の大変さがわかるから、みんなで助け合う」とほほ笑んだ。

戸数が少ない東連はまさに「全員参加」でないとできない御柱祭。地元を離れて住む若い世代も帰郷し、手伝う。集落内は、祭りを祝う手書きの幕や造花など、手作りの飾りで彩られ、祭りへの一人一人の思いがそこかしこにあふれる。
稔さんは「諏訪の御柱祭と規模は全然違うが、祭りへの熱気は変わらないと思う。成功させるために一生懸命盛り上げたい」と力強く話した。
記事・写真 松井明子
2022年4月30日号フロント