県内初の個展 県立美術館で開催中

チェーンソーで木材に刻む複雑な模様
「森Ⅸ」― 高さ2メートル余の角材30本林立
小川村出身の現代彫刻家戸谷成雄さん(74)の県内では初の個展となる展覧会「戸谷成雄 彫刻~ある全体として」が県立美術館で開かれている。チェーンソーで木材の表面に複雑な模様を刻んだ木彫作品の「森」や、「〈境界〉から」「ミニマルバロック」をテーマにしたシリーズを展開。国内外の数々の受賞歴を重ねてきたベテラン彫刻家の作品の全体像にふれられる貴重な展覧会だ。
戸谷さんは、愛知県立芸術大学大学院彫刻専攻修了。武蔵野美術大学彫刻科名誉教授。ベネチア・ビエンナーレ参加など国内外で作品を発表してきた現代日本を代表する彫刻家だ。
本展は、初期から近年までの代表作30点を紹介。森シリーズの「森Ⅸ」は、チェーンソーで縦横斜めに深く浅く彫り出した縦横31センチ、高さ2メートル20センチの角材30本を林立させた作品。これまでに350本を作ったという。
「水根Ⅱスワ」は、縦約4メートル、横3メートル40センチ、厚さ13センチの巨大な木面に、地図からの発想で諏訪湖を中心にさまざまな方向から流出入する水脈を表現した作品。地形を反転させて、湖や川が浮き出るように彫られている。
同館学芸員の鈴木幸野さんは「戸谷さんの彫刻は、社会や言語、彫刻の発生の構造と思想に深く結びついている。それがほかとは違う日本の現代彫刻を代表するゆえん。分かることを求められる現代の展覧会でいかにそれを伝えられるのか難しいが、50年以上にわたる思索の中から生み出されてきた大規模な彫刻作品を体感してほしい」と話している。
ギャラリートークで作品を語る

11月4日のギャラリートークで戸谷さんは作品「森Ⅸ」の前で次のように語った。
「森の持っている構造を彫刻の構造に置き換えてみようというのが森シリーズ。これまでに350本作ったその一部。日本の森は山と谷が連続する中にあって、視線が上、下、横、斜めといろいろな方向を向かざるを得ない地形。森は柔らかくて、柔軟性があって、一つの中心に向かうのではなく、生態系を含めたあるバランスをとった構造で、あらゆるものが関係しているけれど、それぞれ個別に持っているものが個的に存在している」
「戸谷成雄 彫刻~ある全体として」展
来年1月29日(日)まで。会期中、11月26日(土)、12月24日(土)の14時から学芸員によるギャラリートークを開催。参加費は無料ですが観覧券は必要。事前予約は不要。
休館日は水曜日と年末年始(12月28日~1月4日)。開館時間は9時~17時。観覧料は一般1000円、大学生と75歳以上700円、高校生以下無料。
(問)同館☎︎050・5542・8600
記事・写真 中村英美
2022年11月26日号フロント