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「寄付の本舎(ほんや) ほんのきもち」

田中一樹さん

ターミナル。51の前で、田中さん(右)と水島さん
地域の団体支援の受け皿に

 長野市の市民活動団体などの中間支援を行っている「市民協働サポートセンター」スタッフの田中一樹さん(49)=篠ノ井布施五明=が、高田五分一のコワーキングスペース&シェアオフィス内にあるライブラリーで行っている活動の名称だ。このユニークな名称には、活動の特徴と、田中さんの本に寄せる思いが詰まっている。

 ここでは、寄付のかたちで、無償で集めた本を陳列し、本を欲しい人には、寄付金として代金を支払ってもらう。1冊100円以上とし、金額は本を欲しい人の任意とする。「売り上げ」=寄付金が一般の古書店と違うところで、運営費を差し引いた全額を地域の市民活動団体へ寄付する。

 田中さんは約20年余、県内の書店に勤め、2020年4月から同センターで勤務。市内のNPO法人やボランティア団体から日々相談を受ける中で、コロナ禍も重なり、資金不足で活動が滞っている現状を知ったという。それまでもイベントに出店して、寄付された本を媒介にして本の楽しみを味わってもらうなど、本にまつわる活動をしてきた。そうしたこれまでの活動の経験から、古本の寄付の受け皿をつくり、地域の団体を支援する方法として、「寄付の本舎」の仕組みを思いついた。

 昨年の春に事業を立ち上げ、今年3月からは紙製品の卸売業の水島紙店(高田五分一)が同社の事務所をリノベーションしてオープンしたコワーキングスペース&シェアオフィス「TERMINAL51°(ターミナルゴーイチ)」にあるライブラリーを拠点にしている。ライブラリーには、施設の利用者層に合わせて田中さんが在庫の中から選んだビジネス書を中心に、「仕事の合間に手軽に手に取ってもらえるように」と、同社の水島康明(みちあき)社長(50)が個人的に購入した大判の図録も一緒に並ぶ。

 水島さんが同施設をつくる準備をしていた時、相談のため同センターに来てたまたま居合わせたのが田中さんだった。田中さんは1000冊以上ある在庫の置き場に悩んでいて、常設店舗を持ちたいと考えており、ライブラリーの管理者を探していた水島さんと思いが合致した。

 田中さんは「本は誰もが平等に楽しめて、本を介することで同じ趣味の人と出会えるなど、人と人とをつなぐツールにもなる。気軽に本を手に取ってもらい、地域活動にも関心を寄せてもらえる機会を増やしていきたい」と話している。

 記事 松井明子

 写真 森山広之

 

 「寄付の本舎 ほんのきもち」は、本の提供と受け取りの循環をするイベントを毎月第1日曜日10時〜14時、ターミナル51°前で開催している。次回は8月6日(日)。ターミナル51°の見学会も同時開催。本の状態や内容によって、受け取りのできない本も。

 (問)田中(メール)kazzpon0319@gmail.com


2023年7月22日号フロント

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