太陽とボレロ

=2時間13分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で6月3日(金)から公開

(c)2022「太陽とボレロ」製作委員会

地方の交響楽団舞台 解散公演の人間模様

 俳優・水谷豊の監督作品3作目「太陽とボレロ」が描くのはクラシックの世界。自ら執筆したオリジナル脚本で、指揮者役でも出演している。「地方都市の交響楽団を舞台にした映画」という水谷監督の着想からロケ地に選ばれたのが、音楽祭「セイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)」で知られる楽都、松本市。音楽を愛する人々の人間模様を描いたエンターテインメント映画だ。

 18年の歴史を誇るアマチュア交響楽団・弥生交響楽団を主宰する花村理子(檀れい)は、厳しい運営が続き苦しい決断を迫られていた。創立当時からの支援者・鶴間(石丸幹二)と楽団存続のため資金集めに奔走するが、なかなか協力は得られず、ついに解散を決意する。

 それぞれに事情を抱える楽団員たちは、いさかいを起こし不協和音が噴出。足並みがそろわない中、解散コンサートの開催が決定する。プログラムに選ばれたのはラベルの名曲「ボレロ」。ばらばらになった心を一つにして、無事ハーモニーを奏でることができるのか。

 この映画をより魅力的にしているのが、世界的な指揮者・西本智実と彼女が主宰するイルミナートフィルハーモニーオーケストラが映画製作に参加していること。「白鳥の湖」「ファランドール」「カルメン」など劇中に流れる楽曲を担当しただけでなく、弥生交響楽団のメンバーを演じた俳優陣を特訓し、見事プロのオーケストラと共演させた本格的なコンサートシーンも見どころだ。

 メインロケ地の松本市の街並みや女鳥羽川のほかにも、安曇野市や塩尻市、軽井沢大賀ホールなどでも撮影された。スクリーンに広がる信州の美しい自然・風景に重なるようにクラシックの名曲の数々が流れる。

 オープニングとラストでは、西本智実のタクトから生まれる「ボレロ」の壮大でドラマチックな高揚感に圧倒される。映画でありながら、まるでコンサートホールにいるかのような臨場感は、まさに至福のひとときとなった。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年5月28日号掲載