天間荘の三姉妹

=2時間30分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中

(C)2022 高橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会

あの世とこの世の間 暮らす人々の物語

 人はさまざまな死の場面に直面する。有無を言わさずこの世から去る死もあれば、人生を振り返りつつ死を受け入れる終焉もある。「天間荘の三姉妹」は、あの世とこの世の間に暮らす人々を描いたヒューマンファンタジーだ。

 美しい海を見下ろす山の上にある老舗旅館「天間荘」。宿泊客は肉体を離れた魂の持ち主で、肉体に戻るかそのまま天界に旅立つかを決断するまで逗留できるのだ。旅館を切り盛りするのは若女将(おかみ)のぞみ(大島優子)。妹のかなえ(門脇麦)は水族館でイルカのトレーナーをしている。2人の母親で大女将の恵子(寺島しのぶ)は、かつて天間家を捨てて姿を消した夫への怒りがいまだに収まらない。

 姉妹の元に、魂をいざなう天界の門番イズコ(柴咲コウ)に伴われ、交通事故で臨死状態に陥った小川たまえ(のん)がやってきた。しかも腹違いの妹だという。現世では天涯孤独だったたまえは、家族ができたことを素直に喜び、三姉妹の生活が始まった。

 原作は漫画家・高橋ツトムのコミック「スカイハイ」シリーズのスピンオフ「天間荘の三姉妹—スカイハイ」。現在ハリウッドで活躍中の北村龍平監督がメガホンを取っている。

 天間家の女性たちを演じる個性的な女優たちの共演も見どころの一つだ。一見破天荒で豪快な母親を貫禄たっぷりに演じる寺島しのぶ。問題を抱えた人々の心を自然に溶かしてゆく天真爛漫なたまえ役に、原作も脚本も「のん」をイメージしてあてがきしたというだけにまさにはまり役。さらにかなえ役の門脇麦と、かなえの指導でイルカのトレーナーを目指すたまえの、2人のイルカの調教シーンも特訓して身に付け、吹き替えなしというから驚きだ。

 物語の舞台となる不思議な港町・三ツ瀬で、多くの住人が日々暮らしながら、己の人生に答えを見つけ静かに去ってゆく。その訳が次第に明かされてゆく時、この物語に込められたメッセージの優しさに胸が熱くなる。

 人は命があるから生きている。当たり前のようで決して当たり前ではない、今生きている奇跡と喜びを教えてくれる魂の救済の物語だ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年10月29日号掲載