大河への道

=1時間52分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2022「大河への道」フィルムパートナーズ

伊能忠敬主人公に 感動を呼ぶ人情噺

 日本中を歩いて測量し、初めて実測による全国地図作成を成し遂げた江戸時代の測量家伊能忠敬。その生きざまと、精度の高さだけでなく美しさも併せ持った地図に魅了された立川志の輔が創作した落語を原作に映画化したのが「大河への道」。歴史に名を刻んだ偉人と志を継いだ人々の熱い思いを描くとともに、落語ならではの笑いあり涙ありの人情噺が感動を呼ぶ。

 「地元の活性化には大河ドラマだ」。千葉県香取市役所の総務課主任・池本(中井貴一)が、観光振興策の会議で苦し紛れに出したアイデアは、伊能忠敬を主人公にした大河ドラマを実現させること。思いがけず企画が採用されプロジェクトの責任者になった池本は、引退した大物脚本家をねばりで担ぎ出すことに成功する。だが伊能忠敬記念館の資料から衝撃の事実が発覚。なんと地図が完成した年より3年も前に、忠敬は死んでいたのだ。完成させたのは誰なのか。

 ミステリーの舞台は江戸時代へと変わる。忠敬の死の床に集まった幕府天文方の高橋景保(中井貴一・二役)ら弟子たちは、忠敬の志を遂げるためある決断を下す。

 現代と江戸時代を行きつ戻りつしながら物語は展開する。共演する北川景子、松山ケンイチら、役者たちが現代劇と時代劇それぞれ一人二役で演じている設定が面白い。

 上総国(現千葉県)の海辺の村で生まれ育った忠敬。地元の人は親しみを込めて「チュウケイさん」と呼ぶそうだ。「地球の大きさを知りたい」という壮大な夢をかなえるため、50歳から本格的に天文暦学を学び、55歳で測量の旅にたつ。74歳で亡くなるまで情熱は途切れず、周囲の人々を動かしてゆく人間力のすさまじさはまさに偉人。

 現代のようなテクノロジーもなく、上空から見ることもできない時代に、いかにして高精度の地図を作ることができたのか。海岸線や街道をなぞる測量シーンの再現に、測量隊の苦労と誇りがにじむ。余談だが、ここ信州に測量隊がやってきたのは、文化11年、1814年のこと。忠敬69歳の時である。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年5月21日号掲載