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夜明けのすべて

=1時間59分

長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で公開中

(C)瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会

苦しみ・悲しみに直面 人の支えに救われる

 病気のために心の悩みを抱える2人の男女の間に芽生えた感情と、交流を通して関係性が少しずつ変化していく2人の姿を繊細なタッチで描き出した「夜明けのすべて」。本屋大賞受賞作家、瀬尾まいこ原作小説の映画化だ。

 PMS(月経前症候群)と診断されている藤沢美紗(上白石萌音)は、さまざまな治療のかいもなく、月に一度訪れる生理のたびに怒りの感情を爆発させていた。病気が原因で会社を退職し、今は小さな町工場の事務員として働いている。転職してきたばかりの社員、山添孝俊(松村北斗)の仕事のやる気のない態度に腹を立てた美紗はきつく当たってしまうが、ひょんなことから山添もパニック障害という精神的な病気を抱えていることに気が付く。山添は突然パニック障害を発症し、大手の会社を辞めた経歴の持ち主だった。互いの病気を知ったことで、2人の関係は少しずつ変化してゆく。

 病気のつらさや苦しさは本人しか分からない。ましてや外見からは分からない心の場合はなおさらだろう。他人との関わりを避け、すべてを諦め無気力になっていた山添と、感情が不安定で、自分の体も心もコントロールできないことに落ち込む美紗。生きがいを失い、自分自身も押し殺して過ごしていた2人が、どう向き合ってゆくのか。そんな2人を温かく見守る人々との日常が、穏やかに描かれてゆく。

 「元々は明るくておせっかいな藤沢さん」と、「社交的で有能な社員だった山添君」というキャラクターを演じる2人は、まるで原作から抜け出てきたようだ。

 「ケイコ 目を澄ませて」(2022年)で国内外で高く評価された三宅唱監督が、原作のきめ細かな描写に、さらにオリジナリティーを加えて、優しさと希望に包まれたドラマになった。

 「夜明けの直前が一番暗い」という言葉に、今のつらさを乗り越えられる、そんなささやかな勇気が湧いてくる。人は誰もどこで苦しみや悲しみに直面するか分からない。そんな時、ほんの少しでも支えてくれる人がいることに救われる。見終わった後、空を見上げたくなるような心地良さに満たされる作品だ。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年02月10日号掲載

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