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夏季企画展 「主張する古墳」

きょうから 県立歴史館

森将軍塚古墳(千曲市)。4世紀中ごろの建造。県下最大で最古の前方後円墳
古墳時代から「シナノ」ひもとく

 「地元にある古墳を通して、子どもたちが長野県の古墳時代について語る世界をつくりたい」—

 7月1日(土)から千曲市の県立歴史館で始まる夏季企画展「主張する古墳〜新たなシナノの古墳時代像」を担当する考古資料課の石丸敦史さん(45)は企画の趣旨をこう話す。同展は、教科書に載っている一般的な古墳時代の知識にとどまらず、「シナノ」の古墳時代とはどんなものだったのかをひもとく内容だ。

 企画展に先駆けてこのほど、石丸さんが同館の考古学講座で講話。3世紀の終わりから7世紀にかけての古墳時代に造られた有力者の墓である古墳には、前方後円墳、前方後方墳、円墳、方墳などさまざまな形状があり、その形と出土品から分かる古墳時代の勢力を説明した。

考古学講座で話す石丸さん

 シナノ最古の古墳は3世紀末に造られた「弘法山古墳」(松本市)。その後4世紀になると長野盆地に大型の前方後円墳が多く造られるが、5世紀には造られなくなる。一方で「シナノ」の南部の飯田、下伊那に築造されるようになった。長野盆地で前方後円墳が造られなくなったのは朝鮮半島の勢力と結び付くようになったからで、飯田、下伊那では畿内勢力と結び付いたために前方後円墳が造り始められたと考えられる。

 展示では、シナノの古墳の始まりから、5世紀のシナノの古墳の変革と、なぜそうした変革を遂げていったのか。また、古墳に埋葬されたシナノの王が自らの地域をどう経営しようとしたのかを、各古墳から出土した馬生産にまつわる馬具や鉄器などから解き明かす。

 石丸さんは、「古墳は目に見える埋蔵文化財。企画展が自分の身近にある古墳に興味を持つきっかけになればいい」と期待していた。


写真左から大星山3号墳(若穂綿内)から出土した鉄剣、鏃(やじり)など。榎田遺跡(若穂綿内)出土木製壺鐙(つぼあぶみ)。畦地1号古墳(飯田市座光寺)から出土した垂飾付耳飾(複製)。(写真は3点とも県立歴史館提供)

 8月20日(日)まで。7月29日(土)13時半から、長野県の古墳を掘り下げる講演会を開催。京都府立大学准教授の諫早直人さんが「シナノの騎馬文化と古代東アジア」をテーマに話す。参加希望者は同館ホームページで申し込み方法を確認して事前に申し込む。

 9時から17時開館。月曜と7月18日(火)休館(7月17日、8月14日は開館)。入館料は企画展のみ、または講演会のみ一般300円、両方で500円。大学生は各半額、高校生以下無料。

 (問)同館☎︎274・2000


記事・写真 中村英美


2023年7月1日号フロント

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