地震・水害を乗り越えてきた長沼の伝統的住宅建築

「米沢邸」に見る先人の知恵

大きな屋根の米沢邸の主屋
あすシンポジウム、保存の機運高め修復推進

 2019年の台風19号水害で被災した長沼の米沢邸で9月4日(日)、シンポジウム「災害・文化・産業の視点でとらえた 物言わぬ語り部『米澤邸』の真相」が行われる。災害をきっかけに明らかになった長沼の伝統的な住宅建築の価値を広く知ってもらおうと、一般社団法人「しなの長沼・お屋敷保存会」が開く。

 米沢邸は穂保の県道(かつての北国脇街道)沿いにあり、名主などを務めた旧家。台風19号では千曲川堤防の決壊地点に近く、強い濁流にさらされた。家財や壁が流出したものの主屋や長屋門、土蔵などの建物群が崩壊せず残った。


地震や洪水を受けても壊れない工夫がみられるという主屋の内部

 20年に有志の「長沼の歴史的景観・建造物を守る会」が長屋門で土壁修復ワークショップを開き、延べ250人の参加者が壊れた壁を直した。これをきっかけに米沢邸を後世に伝えていきたいとの声が上がり、被災後に長沼を離れて暮らす所有者から無償で借り受けることに。21年に保存会を発足して修復保存や活用に向けた取り組みを始めた。

 米沢邸の建築については、信大工学部の土本俊和教授の研究室が調査に入り、価値が明らかになってきた。主屋が建てられたのは1818年。その後に起きた善光寺地震(47年)や長沼地震(1941年)、繰り返し起きた洪水を乗り越えてきた。柱と柱をつなぐ貫が動いて地震の揺れを吸収する、洪水時は土壁が流れることで建物の構造を維持する—など、伝統的な工法の中に災害でも壊れないようにする工夫がみられるという。

長屋門の中には蚕種を保管するコンクリート製プールも。「長沼の産業の歴史を物語る遺産でもある」と太田さん

 保存会理事・事務局長の太田秋夫さん(70)=西三才=は「洪水常襲地で生きてきた長沼の先人の知恵が詰まっていて、こうした建物が長沼らしい景観をつくってきた。しかし、台風後の建物解体で土壁の建物は失われつつある」。今回のシンポジウムをきっかけに保存の機運を高め、クラウドファンディングなどで資金を募って修復を進め、将来は文化財指定を目指すという。

 シンポジウムでは、伝統建築の専門家や地元の被災住民ら4人が、米沢邸の文化的価値や長沼地区の復興に与える可能性などを話し合う予定だ。

記事・写真 竹内大介


 
シンポジウム
「災害・文化・産業の視点でとらえた物言わぬ語り部『米澤邸』の真相」

 9月4日(日)10時〜12時、米沢邸(穂保927)で。入場無料。申し込み不要。

 シンポジストは、建物修復支援ネットワーク(新潟市)代表の長谷川順一さん、信大工学部教授の土本俊和さん、長沼地区区長会長の松原秀司さん、しなの長沼・お屋敷保存会長の天利一歩さん。

 (問)同保存会☎︎296・3311


2022年9月3日号フロント