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哀れなるものたち

=2時間22分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で1月26日(金)から公開

(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

奇抜なストーリー 心が解放される感覚

 風変わりな天才外科医の奇怪な手術によって奇跡的に蘇生した女性が大陸横断の旅に出る—。「哀れなるものたち」は、スコットランドの作家アラスター・グレイの奇想天外な小説の映画化だ。

 自殺した若い女性ベラ(エマ・ストーン)は、天才外科医バクスター(ウィレム・デフオー)によって奇跡的に蘇生したが、知性を失っていた。記録係を任せられた医学生マックスは、大人の女性の体でありながら、まるで幼児のようなベラの態度に面食らうが、会うたびに成長していることに驚く。不思議な魅力を放つベラに引かれた女好きの弁護士ダンカン(マーク・ラフアロ)は、ベラを誘惑し外の世界に連れ出すが、性に目覚めたベラの要求は次第にエスカレートしてゆく。

 好奇心旺盛で貪欲、羞恥心とは無縁のベラの自由奔放さは、周囲の人間たちも変えてしまうほどのパワーに満ちている。なぜそんなベラをつくりだしたのか。まるでフランケンシュタインを思わせる、つぎはぎだらけの容貌のバクスター博士だが、彼自身にも隠されている秘密があった。

 純粋さと成熟さを併せ持つ、不可思議なヒロインに挑んだエマ・ストーンの大胆かつ繊細な演技に注目だ。違和感のあるギクシャクした体の動きや話し方。そしてある瞬間に瞳に宿る知性。知識を吸収しもたらされるわずかな変化を表現する演技が素晴らしい。人間の本能をむき出しにした性描写に驚く。きれいごとでは済ませない描き方は賛否両論を招くかもしれないが、ベラにとっては大人の女になる通過点のシーンだ。

 奇抜なストーリーでありながら、物語に寄り添うのは切ないほどの自由への憧れだ。ベラと共にいつしか心が解放されるような不思議な感覚。こんなにエネルギーにあふれた作品に出合うとは。

 監督は、「女王陛下のお気に入り」(2018年)のヨルゴス・ランティモス監督。エマ・ストーンは、同作に続いて本作でも同監督とタッグを組み、ダークでありながらユーモアさえ感じさせる原作の世界観を映像化した。べネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞受賞。ゴールデングローブ賞で見事作品賞と主演女優賞の2冠を獲得した。

 「R18+」指定

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年01月20日号掲載

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