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告白、あるいは完璧な弁護

=1時間45分

長野ロキシー(☎︎232・3016)で公開中

(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & REALIES PICTURES All Rights Reserved.

言葉の応酬—心理劇 次第に高まる緊迫感

 不倫相手が殺され、容疑者となったIT企業社長。潔白を主張する彼が雇った女性弁護士。密室殺人事件に関係するもう一つの事件。韓国映画「告白、あるいは完璧な弁護」は、複雑に絡み合う人間心理を描いたサスペンス・ミステリーだ。

 世間から身を隠すように雪深い山の別荘に潜む、IT企業社長のユ・ミンホ(ソ・ジソブ)を訪ねてきたのは、「無罪率100%」を誇る敏腕弁護士のヤン・シネ(キム・ユンジン)。ミンホの不倫相手のキム・セヒ(ナナ)が密室状態のホテルで殺され、同室していたミンホが第1容疑者となっていたのだ。「わなにかけられた」と潔白を主張するミンホに、シネは真実を話すよう迫る。重い口を開き始めたミンホの言葉から、隠蔽(いんぺい)された過去のある事件が浮かび上がる。 

 一癖も二癖もある登場人物たちを演じる韓国映画界の実力派たち。さまざまな表情で見る者を惑わすソ・ジソブ。「シュリ」(1999年)で北朝鮮の工作員を演じたキム・ユンジンの存在感は変わらない。雪に閉ざされた山荘で、一対一で向かい合うミンホとシネの鋭い言葉の応酬から生まれる心理劇の面白さ。観客もまた「だまされてはならない」と2人から目が離せない。頭脳明晰なこの男は真実を語っているのか、それとも己を守るためにうそをついているのか。それぞれの視点から導き出されてゆく真実。山荘や密会先のホテルなど、限られたシチュエーションでありながら、次第に高まる緊迫感に圧倒される。

 スペイン映画「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」(2016年)のリメークだが、オリジナルとは違う展開で韓国映画ならではのパワーに満ちている。二転三転する、先の読めないストーリーと緻密な構成の脚本で、韓国では公開時に初登場1位のヒットとなった。

 脚本も手掛けたユン・ジョンソク監督は、背景に韓国の現代社会が持つ企業のうそや不祥事にも視点を当てたという。

 ポルトガルのポルト国際映画祭で最優秀監督賞を受賞したほか、世界の映画祭で招待上映されるなど注目を集めている。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年8月26日号掲載

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