top of page

古牧に伝わる民話「にとはちさま」を伝承

緑ケ丘小で演劇上演 児童17人熱演

民話劇「にとはちさま」を熱演する緑ケ丘小の児童たち
保存会発足から20年余 絵本を最近出版
江戸時代 農民助けた青年の「義の心」の物語

 緑ケ丘小学校(高田)で11月24日、地元に伝わる民話「にとはちさま」を基にした演劇が上演され、同小4年生から6年生の17人が日頃の稽古の成果を披露した。


 「にとはちさま」は、江戸時代に下高田村(現・南高田)に住んでいた若い農民の助弥(すけや)が、重い年貢に苦しんでいた村の農民を助けた「義の心」を伝える物語。直訴したことで松代藩に助弥は処刑されたが、三斗の年貢が二斗八升に軽減され、村が救われた。2002年の古牧地区100周年記念事業の際、この物話を児童演劇で披露すると、継続を望む声が多く挙がり、「にとはちさま保存会」が地域や学校、PTA、有志らで発足。古牧地区の児童が通う古牧・緑ケ丘・南部の三つの小学校が毎年順番に演者を募集して開催してきた。


 今年は4月に演者を募集し、5月から毎週日曜の午前に稽古を行ってきた。11月に入ると午後まで時間を延長し、本番前最後の稽古となった17日には5人のОB・ОGが駆け付け、指導を手伝った。


 主人公・助弥を支える名主の伝兵衛を演じる4年生の会津千璃さん(9)は、「学校で保存会の人の説明を聞いて、やりたいと思った。台本を読んで、楽しくて、悲しくて、面白かった。本番は緊張するかもしれないけれど(学生時代演劇部員だった)お母さんから感情の表し方を教えてもらったので、頑張る」と、声を弾ませた。15年前の6年生の時に役人を演じた江尻蓮斗さん(27)は、「振り返ってみると達成感があった。この気持ちを子どもたちに伝えていきたい」と熱心に演技指導にあたった。


 公演日の24日は会場で、保存会が制作し、出版されたばかりの絵本「にとはちさま」(ほおずき書籍)の販売も行われた。絵と文を担当したのは、保存会役員の小池(旧姓・内田)ちづるさん(53)。コロナ禍の20年から3年間、児童演劇が中止を余儀なくされたことで、保存会活動への関心が薄れ、存続の危機を感じたのが制作のきっかけだ。「この地域に助弥さんという青年と、彼を支えた人たちがいたことを伝承したかった」と、約1年かけて取り組んだ。


 小池さんは絵本の中で義の心を「正しい行いを守る心」と解説したが、「それは、誰かのために自分の時間やエネルギーを使うことでもあると思う」と、子どもたちを指導するОB・ОGたちを指差した。


 公演終了後に小池さんは、「直前まで演技がぎこちなかった子どもたちが、過去最高の『にとはちさま』を演じてくれた。見事に成長してくれた」と、涙を浮かべた。


 絵本はA4判、34ページ。1980円。市内などの書店で販売中。

 記事・写真 斉藤茂明


2024年11月30日号フロント

bottom of page