医療機器を使う家庭へ

電気自動車(EV)・ハイブリッド車(HV)から電気を取り出し

電源車と人工呼吸器を接続した様子(11月3日、更北公民館駐車場で開いた防災イベントでのデモンストレーション)
更北地区で取り組み始まる

安心して暮らせる地域づくりの一歩

 病気や障害のため、人工呼吸器や酸素濃縮器などの医療機器を使いながら生活する人を、災害などで電気が使えなくなったときにどう支えるか—。緊急時の電源として電気自動車(EV)や電気とエンジンのハイブリッド車(HV)に着目し、こうした車を持つ人と医療的ケアが必要な人がいる家庭とをつなげる取り組みが、更北地区で始まった。県社会福祉協議会がこのほど、更北地区住民自治協議会とモデル事業を始めた。

 在宅で使われる医ケア機器には、たんの吸引器、人工呼吸器、薬を霧状にして呼吸器に届けるネブライザー、在宅酸素療法に必要な酸素濃縮器、たんを吐き出しやすくするカフアシストなどがある。電気で動くこれらの機器の助けで生活する人と家族にとって、災害などで停電した場合にすぐに必要なのが代替電源の確保だ。

 非常時の電源にはエンジン発電機やポータブルバッテリーがあるが、発電機は電圧が一定でないため医療機器に直接接続するのに適さず、バッテリーは充電した分を使い果たせば終わってしまう。そこで県社協が目を付けたのがEVやHVだ。

 家庭への普及が進み、身近なものになっているEVやHV。走行に必要な電気を蓄える電池から、コンセントを通して外に電気を取り出すことができる。一般的なHVの場合、最大で家庭で使う電気の3〜5日分ほどを供給でき、燃料を補給すればさらに長期間給電することもできるという。

 更北地区では、災害時に電源の支援を必要とする医ケア家庭と、支援できるEVやHVの所有者がそれぞれ登録し、事務局が距離や条件を基にマッチングする仕組みをつくった。マッチングされた両者は、災害時に備えてあらかじめ顔を合わせ、直接やり取りができるように連絡先を交換しておく。

 県社協の橋本昌之さん(46)は「安心して暮らせる地域づくりの一歩になる。EVやHVを持っていれば、新しいかたちの災害ボランティアができることにもなる」と話す。同住自協事務局職員で、自身も医ケアが必要な子どもを育てる山本里江さん(51)は「電源の確保だけでなく、近所に住む人とつながり、災害の状況や避難所などの情報が得られるようになる意義も大きい」と期待している。

記事・写真 竹内大介


2022年11月12日号フロント