具象と抽象巧みに融合
- 6月21日
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更新日:6月30日
信州新町出身 白田知恵子さん 故郷で念願の個展

キルトアート約70点
信州新町出身のキルトアート作家白田知恵子(はくたちえこ)さん(76)=埼玉県川口市=の「キルトアート個展〜ふる郷に想いを運ぶ」が、信州新町美術館市民ギャラリーで開かれている。白田さんが2000年以降に手掛けた、緻密でアート性豊かな作品約70点が並ぶ。「念願だった生まれ故郷での個展。地域の人たちにキルトアートの世界をゆっくりと楽しんでもらえたらうれしい」と笑顔で話す。
白田さんは、地元の小中学校から長野西高校を卒業して、都内の短大に進んだ。もともと洋裁が好きで、学生時代の自分の洋服はほとんどが手作り。結婚後、2人の子どもの洋服も手作りした。
キルトとの出合いは30歳の頃。婦人雑誌で目にした小さな布をつなぎ合わせたパッチワークのランチョンマットや小袋などに興味が湧き、自分や子どもの服を作った残り布で、自己流で本棚の目隠しやバスマットを作ったのが始まりだ。
その後、複数のキルト教室に通い、本格的に技術を身に付けていく。「とりわけ色合わせが楽しくて夢中になった」。45歳の頃には「心を揺さぶられるような感動的な作品を作りたい」と、土台布に不規則に布を縫い付け、刺しゅうを施した「クレイジーキルト」も習得。60歳を前に「構成学」が専門の筑波大名誉教授の三井秀樹さんに師事し、10年余り色彩とデザインについて深く学んだ。
今も「エモーショナルな作品」を目標にする白田さんの創作の源は「心や目に焼き付いた風景」。夫の転勤に伴い3年半過ごした英国の風景や大好きなバラの花、旅した南米のアンデス山脈やウユニ塩湖、散歩道の四季の花々や草木などをモチーフに、具象と抽象を巧みに融合させたデザインを描く。色を決め、材料、テクスチャーを選び、数千枚の布片をつなぎ合わせて、最後にキルトラインを入れて仕上げる。縦横2メートルを超える大きなものでは制作に2年を費やすこともあるという。
これまで100点を超える作品を手掛けたが「満足がいく作品はまだ一つもないんです」と白田さん。「でも、だから次こそはと思って続けていけるのかと思います。私のSDGs(持続可能な開発目標)です」と目を細めた。
6月29日(日)まで。月曜休館。開館時間は9時から16時半(最終日は14時まで)。入場無料。
(問)同美術館☎︎262・3500
記事・写真 中村英美
2025年6月21日号フロント