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九十歳。何がめでたい

=1時間39分

長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で公開中

(C)2024「九十歳。何がめでたい」製作委員会

時代をズバリ断じる 草笛が等身大の演技

 直木賞、菊池寛賞、女流文学賞、紫式部文学賞など数々の受賞歴に輝く作家の佐藤愛子。「九十歳。何がめでたい」は、社会現象を巻き起こした、辛口でユーモアたっぷりのベストセラーエッセーの映画化だ。

 90歳の作家、佐藤愛子(草笛光子)は娘の響子(真矢ミキ)と孫娘の三世代暮らし。のんびりしようと断筆宣言したはずが、何もすることがなく退屈な日々を送っていた。そんなある日、女性週刊誌から連載エッセーの依頼が舞い込む。かたくなに拒否する愛子に、ベテラン編集者の吉川(唐沢寿明)は屈することなく食い下がる。激しい攻防の末についに折れた愛子は、日頃思っていた本音をエッセーにぶつけるが、それが多くの人々の共感をよんでブームが巻き起こったのだった。

 原作に登場するエピソードで思わずほろりとさせられるのが愛犬ハナの存在だ。どんなに憎まれ口をたたいても、主人を慕うハナに、愛子の優しさの本質が見えてくる。反面鋭く突っ込むのは生活の豊かさと引き換えに不寛容になった現代社会への憤り。お年寄りへの敬意を払わず、スマホに頼りきる「日本人総アホ時代」と愛子はズバリと切り捨てる。サバサバと時には辛辣な、愛子の明快な意見に拍手喝采したくなる。

 初めは「長生きは全く面倒くさい」とこぼし、老女のように背中を丸めていた愛子が、吉川の出現で次第に背筋が伸びて息を吹き返してゆく。そんな愛子を演じた草笛光子は昨年、自身も90歳になり、まさに等身大で演じている。テレビや映画で見る草笛のアグレッシブな若々しさも驚きだが、なんと原作者の佐藤愛子氏は昨年11月5日に100歳を迎えた。

 監督は「老後の資金がありません!」(2021年)の前田哲。楽しく老いるこつは、「やりたいことだけをやり、あるがままに生きてゆくことではないか」という。

 年を重ねると、肉体の衰えは誰にでも起きること。だが心の老化は感受性を磨き続けることで、何とかなりそうだ。すてきな年寄りになるためのヒントがこれからの人生の背中を押してくれる。

 日本映画ペンクラブ会員、ライター


2024年6月22日号掲

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