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ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE

=2時間43分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2023 PARAMOUNT PICTURES

アクションと追走劇 不気味な存在「それ」

 トム・クルーズ主演の人気スパイアクション映画「ミッション:インポッシブル」。1996年の第1作公開から27年。シリーズ最新作は、初の2部作だ。

 現在公開中の「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」。スパイ組織「IMF」の敏腕エージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)の新たなミッションは、全人類を脅かす兵器に関わる鍵を手に入れること。だが謎の女性グレース(ヘイリー・アトウェル)に鍵をすられたことで、闇の武器商人や兵器を狙う幾つもの組織の追跡が始まる。

 イーサンの人間性に引かれ絆を培ってきたチームのメンバーたちも、命の危険にさらされながら追走する。それを狙うのが、影の男ガブリエルだ。イーサンの過去を知る因縁の存在で、イーサンを苦しめるためにメンバーを標的にする冷酷な敵だ。イーサンが守ると誓った女性たちの存在が、これまでにないほどエモーショナルなドラマを盛り上げる。

 そして代名詞のアクションの斬新さは半端ではない。海抜1200メートルの断崖絶壁からのバイクダイブ、走行中の急行列車の屋根でのバトル、作り物の映像ではない生身のアクションのリアルに圧倒される。クルーズ自ら体を張った驚異的なスタントに、果敢に挑む彼の情熱に脱帽するしかない。

 本物へのこだわりはアクションだけではない。このシリーズならではの魅力の一つが世界を股に掛けた舞台だ。アブダビの砂漠の乾いた世界、水の都ベネチアの神秘的な夜景、ローマの迷路のような街やスペイン広場まで疾走する追走劇、観光では見ることのできない都市の魅惑的な表情を映し出す。 

 ストーリーの肝となるのが「それ」と呼ばれる不気味な存在だ。コンピューターがさまざまな情報を書き換え、人間の心理までもかく乱する。今世界が直面しているネット社会の問題を浮き上がらせる。最近話題のチャットGPTのように、人工知能(AI)の進化と性能の高さは便利であると同時に人間が操られる恐怖さえ感じさせる。まさに今を捉えたテーマとスリリングな展開に、来年春公開の「PART TWO」が待ち切れない。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年7月22日号掲載

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