長野県推薦映画=2時間1分
長野グランドシネマズ(☎︎050・6875・0139)で 12月6日(金)から公開
(C)2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.
祖母が回想し語った 本当の優しさと勇気
遺伝子疾患により顔が変形しているため、いじめや裏切りに遭う少年オギーとその家族の絆を描いた「ワンダー 君は太陽」(2017年)。「ホワイトバード はじまりのワンダー」は、いじめた少年ジュリアンを主な登場人物に、いじめた側の心情と救済を描いた、前作のアナザーストーリーだ。
いじめが原因で退学処分となり、転校したジュリアンは人との関わりを避け、孤独な学校生活を送っていた。そんな中、社会派の画家として活躍してきた祖母のサラ(ヘレン・ミレン)が、ニューヨークで回顧展を開くためパリからやってきた。愚かな行為をした孫の行く末を心配したサラは自らの少女時代を語り始める。
1942年、ナチス占領下のフランス・パリ。ユダヤ人たちへの迫害が厳しさを増す中、ユダヤ人であるサラ一家は収容所に送られる前にフランスから脱出しようと決める。しかし、サラの学校にナチスが押し寄せ、ユダヤ人生徒を連行する。運良く逃れたサラは、小児麻痺(まひ)で片足が不自由な同級生ジュリアンに助けられ、彼の家の納屋で息をひそめて暮らす日々が始まった。
祖母が回想の中で語ったのは、人間の本当の優しさと勇気だ。いとも簡単に命を奪うナチスの冷酷さと蛮行に、人間性が失われていく戦争の恐ろしさ。「命の危険を冒して人を助ける時、その親切は奇跡に近い。誰もが心に持つ光が、生きる道標になる」。名女優ヘレン・ミレンが語る言葉に胸を打たれる。
タイトルの「白い鳥」は、大空を舞い、つらい時に希望を届けてくれる自由への憧れの象徴だ。信頼を深めてゆくサラとジュリアンが想像の翼で世界を旅するシーンは、無限の温かい時間が流れてゆくようだ。「ネバーランド」や「プーと大人になった僕」のファンタジー・ヒューマンドラマで知られるマーク・フォースター監督ならではの夢に満ちたシーンが美しい。
人々が口にする言葉「人間万歳!」。他者を思いやる優しさを持つことこそが、人間である証しなのだと教えてくれる。
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
2024年11月30日号掲載