ベイビー・ブローカー

=2時間10分 (長野グランドシネマズ☎︎233・3415)で6月24日(金)から公開

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赤ちゃん連れ去り 奇妙な旅へと展開

 さまざまな事情から親が育てられない乳幼児を預ける「赤ちゃんポスト」から赤ん坊を連れ去って売ろうとする男性ブローカーと、赤ん坊を産んだ母親、彼らを検挙するため追跡する刑事…。是枝裕和監督が、オリジナルの脚本で初めて韓国で撮影した「ベイビー・ブローカー」は、赤ちゃんポストをめぐる人々を描いた人間ドラマだ。

 クリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)の裏稼業は、赤ちゃんを高く売るブローカー。ある夜、若い母親ソヨン(イ・ジウン)が赤ちゃんポストに置き去りにした赤ん坊を連れ去るが、思い直したソヨンが戻ったことで、犯行を通報されそうになる。「大切に育ててくれる家族を見つけるため」と言い訳したことで、母子と共に養父母探しの旅をするはめに。しかもサンヒョンを逮捕しようと見張っていた刑事の追跡も始まり、奇妙な旅が始まった。

 一緒に旅をするのは児童養護施設出身の青年や、施設を抜け出した少年。登場人物はそれぞれ心にトラウマを抱え、孤独で愛に飢えた存在だ。旅の途中で描かれる彼らの人生のエピソードが、現代社会が抱える問題を映し出す。

 善か悪か。父性とは、母性とは、そして家族とは。擬似家族が時とともに本物の絆を紡いでゆく「万引き家族」(2018年)で、カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドール賞を受賞した是枝裕和監督が、これまで描いてきたテーマに寄り添うように、どこかいびつな人間たちの姿に、引き込まれる。

 この映画の魅力の一つが韓国のスターたちが顔をそろえていること。サンヒョン役のソン・ガンホは、米アカデミー賞で作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」(19年)で主演し、世界から注目された名優。是枝監督が初めからイメージしてあて書きしたというだけに、犯罪者というにはどこか憎めない複雑な男を演じ、カンヌ国際映画祭で韓国人俳優初となる主演男優賞を受賞した。

 暗いどしゃぶりの雨の夜に始まる出会いから、いつしか青空が広がるような優しい余韻に包まれるロードムービーだ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年6月18日号掲載