ブラックボックス 音声分析捜査

=2時間9分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で公開中

(C)2020 / WY Productions - 24 25 FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - PANACHE Productions

隠された音源とは

 航空機に搭載されているブラックボックスには飛行データと操縦室での会話と音声が記録され、航空機事故の原因解明に欠かせない。フランス映画「ブラックボックス 音声分析捜査」は、航空事故調査局の音声分析捜査官がブラックボックスの分析を手掛かりに墜落事故の真相を追求し、航空機業界の闇に立ち向かうサスペンススリラーだ。

 ヨーロピアン航空の最新型航空機がアルプスで墜落し、乗客・乗務員全員の死亡が確認された。300人以上の命を奪った事故原因の解明は、ブラックボックスが発見されたことで一気に進むと思われた。だが担当した航空事故調査局の音声分析官が謎の失踪をし、事態は混迷を深めてゆく。

 新たに分析を手掛けたマチュー(ピエール・ニネ)が、事故を解明したように見えたが、隠された音源があることに気づいたことで、さらに不可解な事実が判明する。原因は航空機そのものか、それとも人為的な操縦ミスか、あるいはテロなのか。さまざまな疑惑が浮かび上がるなかで、マチューがたどり着いた真実とは。

 脚本も手掛けたヤン・ゴズラン監督がリサーチのために門をたたいたのが、国家機関のBEA(フランス航空事故調査局)。映画史上初めてBEAが全面協力し、業務が忠実に映像に再現されている。協力理由は過去に起きた事故の再現ではなく、今後の課題となるプロジェクトが脚本に描かれていたからだそうだ。

 日常生活で耳栓を欠かせないほど鋭敏過ぎる聴覚の持ち主、マチューを演じたピエール・ニネも、BEAの分析官を参考に役づくりをしたそうだ。

 ドアの開閉、足音、スイッチを押すかすかな音を聞き分けると、マチューの脳裏には失われた場面がよみがえる。聞きもらさぬよう耳をそばだて息を殺す。この半端ない緊迫感の連続に、見ている観客も呼吸困難を起こしそうになる。

 「妄想では」と言われるほどの繊細な想像力ゆえに、航空業界を取り巻く闇に近づいたマチュー。フィクションでありながら、これからの航空事故の複雑さを予感させるリアルで巧みなストーリー展開に背筋が寒くなる。

 「音だけで謎を解く」、新感覚の極上のミステリーだ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年3月12日号掲載