巣の表面に「打ち水」 翅使い巣に涼しい風
一年で最も過ごしやすい今の時期ですが、時折夏のような暑さが顔を出します。
暑さが苦手なのは昆虫だって同じです。小さな体で驚くような暑さ対策の「技」をもっています。
例えばハチは巣の中が暑すぎると幼虫が死んでしまうため、あの手この手で温度を下げます。
まず池や水たまりなどから水を口に含んで持ち帰ると、巣の表面にかけます。そしてお尻を巣に向け、翅(はね)を羽ばたかせます。こうして扇風機のように涼しい風を巣の中に送るのです。
水をかけて涼をとる方法は、私たちが行う「打ち水」と同じです。水が蒸発する際に周囲の熱を奪う仕組みを利用し、地面に水をまいて地表の温度を下げています。
ところで、今の時期の極端な暑さの多くは、「フェーン現象」が絡んでいます。
フェーン現象とは、風が山を吹き下りる際に、山を下りた先で気温が上がることです。山を越えるたびに気温が上がるため、南風が吹くと松本よりも長野、長野よりも飯山のほうが気温が高くなりがちです。
ちなみに「フェーン」は、ヨーロッパのアルプス山麓で名付けられた言葉です。
今から100年ほど前に、現在の気象庁のトップだった岡田武松さんが、フェーンに「風炎」の字を当てました。フェーン現象で乾燥が進み、火災が起きやすくなるという意味も含まれているのかもしれません。
英語のタイフーンを「颱風(台風)」と表記したのも岡田さんで、ユニークな言葉のセンスをお持ちの方でした。
この夏は「猛暑」が予想されています。人間が外でできる暑さ対策は、服装の調整と汗をかくことです。今のうちから運動などで「汗をかく練習」をしておくと、熱中症のリスクが軽減されるのでおすすめです。
気象予報士・防災士
2022年5月28日号掲載
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