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ナポレオン

=2時間38分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

カリスマ性と残酷さ 「英雄」それとも「悪魔」か

 「英雄」と称賛された半面、「悪魔」と恐れられた男—。「ナポレオン」は、一介の士官から皇帝にまで上り詰めたナポレオン・ボナパルトの人物像を、巨匠リドリー・スコット監督が独自の解釈で描いた歴史スペクタクル映画だ。

 1789年のフランス革命で、国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは、ギロチン台の露と消えた。混乱の中、若きナポレオン(ホアキン・フェニックス)は、トゥーロンの戦いで敵を欺く奇策で見事勝利し、次第に頭角を現してゆく。貴族の未亡人ジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)と出会い、美しさと大胆さに魅了されたナポレオンは結婚するが、それは愛の喜びと苦悩をもたらす人生の始まりだった。

 士官学校の砲兵科で学び、大砲を用いた戦術で指揮官として才能を発揮したナポレオンは、革命後の混乱を収め、国民から熱狂的に迎えられた。35歳でフランス皇帝となり、ヨーロッパ大陸の大半を支配下に置いた。兵士と共に最前線で戦い続けたナポレオンは、ロシア遠征に失敗するまで、61もの戦を指揮している。

 アカデミー賞を受賞した「グラディエーター」(2000年)や「エクソダス:神と王」(14年)など歴史スペクタクルで知られるリドリー・スコット監督は、CG(コンピューターグラフィックス)ではなく実戦をカメラで撮り、当時の戦争スタイルを再現。8千人ものエキストラを実際に訓練してから撮影に臨んだという、壮大なスケールと迫力満点の合戦シーンが見どころだ。

 監督が描くのは、英雄のもう一つの戦い、妻ジョゼフィーヌの存在だ。愛を込めた戦地からの手紙を無視しては男たちと浮名を流す。夫の心が離れ、破綻しそうになると泣いて許しを請う。破滅的な夫婦関係が、ナポレオンを翻弄(ほんろう)し苦しめる。

 「ジョーカー」(19年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが、軍人、政治家としてカリスマ性と残酷さを併せ持つ英雄と、狂おしいまでの愛にとらわれた男の素顔を演じ、新たなナポレオン像をつくりだした。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年12月2日号掲載

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