ナイトメア・アリー

=2時間30分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

欲望と狂気渦巻く 残酷な心理ドラマ

 鬼才と呼ばれるギレルモ・デル・トロ監督の最新作「ナイトメア・アリー」。犯罪、暗黒街などを題材にしたノワール小説の傑作と称されるウィリアム・リンゼイ・グレシャムの原作小説の映画化だ。

 流れ者のスタン(ブラッドリー・クーパー)が、きらめく明かりに誘い込まれるように潜り込んだのはカーニバルの一座。雑用係で雇われたスタンは読心術師のジーナに気に入られ、トリックの手ほどきを受けると、生来の勘の良さで瞬く間に上達する。ショービジネスにとりつかれたスタンは、優しく純粋なモリー(ルーニー・マーラ)を一座から連れ出し、都会に旅立つのだった。

 数年後、上流階級の人々が集う一流ホテルのステージに立つほど名をあげるが、客席にいた妖艶な美女にトリックを見破られてしまう。スタンを窮地に立たせた美女、心理学博士のリリス(ケイト・ブランシェット)との出会いが、運命の歯車を狂わしてゆく。

 芸人たちがざわめくカーニバルに足を一歩踏み入れたスタンと一緒に、怪しげな見世物小屋をのぞき見する淫靡な感覚。原作のタイトル「悪夢小路」に迷い込むようなオープニングは、おどろおどろしい世界に絡めとられてゆくようだ。

 ギレルモ監督の名を世界に知らしめた「パンズ・ラビリンス」(2006年)や、アカデミー作品賞、同監督賞などを受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」(17年)で、不気味で幻想的なダークファンタジーの世界を創造した監督の手腕は健在だ。サスペンス、ホラー、ミステリーと万華鏡のように物語をつづりながら、人間の邪悪な本質を痛烈に見せつける。

 人々を魅了する表の顔と、己の欲望のために平然と人を傷つける裏の顔。野心家のスタンは自ら仕掛けたわなにはまり、追い詰められてゆく。慢心するスタンをけしかけるかのように振る舞いながら、冷徹な顔をのぞかせるリリス。互いの心を操ろうとする鋭い言葉の応酬は、まるでナイフのように突き刺さり血が滴る。ブラッドリー・クーパーとケイト・ブランシェットの、決闘のような緊迫感に満ちた残酷なシーンは、監督が「最大の見もの」と語るほど圧巻だ。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年3月26日号掲載