チェルノブイリ1986

=2時間16分

長野千石劇場(☎︎226・7665)で5月6日(金)から公開

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決死隊志願の消防士 命懸けた壮絶な物語

 1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国で起きたチェルノブイリ原発事故。ロシア映画「チェルノブイリ1986」は、史上最悪の原発事故の被害拡大を防ぐため、命を懸けて闘った人々を描いた壮絶な物語だ。

 消防士のアレクセイ(ダニーラ・コズロフスキー)は10年前に別れた恋人のオリガと、偶然再会する。オリガが女手一つで育てている少年が自分の子どもだと知ったアレクセイは、オリガと新しい人生を歩む決意をする。その直後、チェルノブイリ原子力発電所4号炉で爆発事故が発生。溶け出した核燃料により水蒸気爆発が起きれば、ヨーロッパ全土が汚染されるほどの大量の放射性物質が拡散してしまう。爆発を回避するには貯水タンクの廃水弁を手動で開けるしかない。施設の構造をよく知るアレクセイは、家族を守るため決死隊に志願する。

 原子炉建屋の炎を消火するため、爆発直後の現場に急行した消防士たち。放射能の情報も防護服も十分にないままの消火活動では嘔吐ややけどに苦しみ、のちにがんなどで大勢が命を落とした。

 本作のプロデューサーは当時ドキュメンタリー映画の監督をしており、事故の5日後現地に派遣された。そこで目撃したのは普通の人々が死の危険を顧みず行動する姿だった。自らの体験から何度も映画化を試み、ようやく実現したのだという。消防士や医師、エンジニアら当事者へのインタビューのほか、膨大な資料の整理、綿密な調査が事故の実態をリアルに衝く。

 チェルノブイリ原発事故についてはこれまでも数多くのドキュメンタリーやドラマが作られてきたが、ロシア映画界が政府や国営原子力機関の協力を得られたのは初めてだそうだ。撮影はチェルノブイリと同じ設計図で建てられた、クルスク原子力発電所で行われたという。映画はロシアで公開され、初登場1位を記録した。

 世界中を震撼させた原発事故から36年。今回のロシアによるウクライナ軍事侵攻では、原発事故がもたらす悲惨な現実をよく知っているはずなのに、今もなお危険なチェルノブイリ原発を攻撃、占拠するという暴挙に出た。再び恐怖を覚え、戦争と人間の愚かさを悲しいほどに見せつけられた。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年4月30日号掲載