ザ・メニュー

=1時間48分

長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.

謎めいたレストラン 命懸けのフルコース

 「ザ・メニュー」は、謎めいたレストランを舞台にした華麗でダークなサスペンス・スリラー映画だ。

 世界で最も予約の取れないレストランとして知られる太平洋の小島にたたずむ高級レストラン・ホーソン。伝説的なカリスマシェフ、スローヴィク(レイフ・ファインズ)が腕を振るう極上の料理を味わえるのは一握りのセレブたちだけだ。その夜の特別な招待客はわずか11人。高名な料理評論家、裕福な熟年夫婦、落ち目の映画俳優、成り上がりのIT系の若者たち、そしてグルメおたくのタイラー(ニコラス・ホルト)。直前にタイラーの連れとなり、唯一招待客リストに載ってないマーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)だけが、周りから浮いた存在だ。彼らがなぜ選ばれたのか。衝撃のおもてなしが始まった。

 料理が出てくるたびにうんちくを語り知識をひけらかす者。料理よりもレストランの常連客であることが自慢の者。彼らの不遜な態度から、傲慢さと滑稽さがあぶり出されてゆく。シェフが心血を注いだ料理を理解せず、彼らのありがちな行動に、わが身を重ね何度もドキッとさせられる。

 こだわりの素材や調理、盛り付け、サービス全てに神経の行き届いた完璧な料理を提供することに人生を捧げてきたシェフ。彼を崇拝する厨房のスタッフは一糸乱れずに動く軍隊のようだ、表情一つ変えずにシェフの命令を遂行する、ホール係の存在が一段と不気味さを増す。

 映画に登場する料理は実際にミシュランの三ツ星レストランのシェフが協力して作り上げたそうだ。手の込んだ芸術的な料理の一品ごとの美しさに見とれているうちに、メニューに込められた目的が次第に明かされてゆく。じわじわと緊張感が高まる脚本の巧みさ。レストランの客も、スクリーンを見つめる観客までもがいつしか湧きおこる猜疑心と、強迫観念にも似た空間にのみ込まれ支配されてゆく。感動と恐怖の命懸けのフルコースを召し上がれ!

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2022年11月19日号掲載