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ゴジラ−1.0

=2時間5分

 長野グランドシネマズ(☎︎233・3415)で公開中

(C)2023 TOHO CO.,LTD.

リアルな質感すごく 高揚感にわくわく

 今や世界的な怪獣王となったゴジラが「生誕」してから70年。最新作「ゴジラ—1.0(マイナスワン)」は、松本市出身の山崎貴監督が脚本とVFX(視覚効果)も手掛け、見どころたっぷりに完成させた記念作品だ。

 終戦直後、空襲で焦土と化した東京に戻って来た海軍航空隊の敷島浩一(神木隆之介)。家も両親も失い、隣人から帰還兵であることをなじられ、悩み苦しみながらも、闇市で出会った典子(浜辺美波)と暮らし、生活のために戦後処理の危険な任務、海中に残された地雷除去の仕事に携わる。

 人々の暮らしも落ち着きを見せ始めた頃、突如深海から出現した謎の巨大怪獣ゴジラが、東京の街を容赦なく破壊し始めた。武器を持てない日本は科学の知恵と人々の勇気で未知の脅威に立ち向かう。

 戦争でゼロ=無となった日本は、ゴジラによりさらにマイナス=負の世界に落とされる。 1954年に公開された第1作から踏襲されているのが、ビキニ環礁の水爆実験で被爆したゴジラが破壊神となり、人間たちに襲い掛かる恐怖だ。

 見どころがVFXを駆使したビジュアルの素晴らしさ。熱線を放つため、エネルギーをためる背びれが青く光る不気味さ。ローアングルで見上げるゴジラの巨大さに圧倒される。地響きと咆哮の中、逃げ惑う人々と同じ目線となり、まるで自分も群衆の一人になったようだ。何よりもリアルなゴジラの質感がすごい。

 作曲家・伊福部昭の力強く重厚なテーマ曲で、海中から現れたゴジラと真正面から向き合う場面は、高揚感にわくわくさせられる。

 これまで山崎監督が描いてきた戦中、戦後の世界。「永遠の0」(2013年)で空を、「アルキメデスの大戦」(19年)では海。そして「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズ(05年〜)では、昭和時代の暮らしを再現した。ゴジラはその集大成のような作品となった。

 平和に暮らせることの幸せと命の重みへのメッセージは、迫力満点のスペクタクルな怪獣映画の面白さだけでなく、人間ドラマとしての感動が伝わる。

 岡谷市でロケが行われ、諏訪シネマズに認定された。

日本映画ペンクラブ会員、ライター


2023年11月11日号掲載

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